仮面舞踏会|あらすじと簡単解説・ヴェルディ

「仮面舞踏会」は、実際の暗殺事件を題材にしたオペラです。最初にオペラの制作を依頼したのは、ナポリのサン・カルロ劇場でしたが、ナポリの検閲官が「国王の暗殺」がテーマのオペラは上演できないと拒否。(当時、イタリアはフランスの影響下に。)

上演の要望が多く集まり、ローマのアポロ劇場で、初演が行われました。上演に当たり、もともと、スウェーデン国王のグスタフ3世暗殺事件を題材としていたところを、検閲対策で、17世紀、アメリカ・ボストンに置き換えて、上演が実現しました。

現在では、置き換えをしないで、スウェーデンを舞台にした台本で上演されることもあります。

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オペラ・歌劇「仮面舞踏会」の簡単なあらすじ

総督のリッカルドは、部下レナート妻アメーリアに密かに恋をしている。アメーリアもまたリッカルドに好意があった。リッカルドとアメーリアは互いの思いを知ってしまい、夫のレナートもふたりの思いに気がつく。腹心の部下であったレナートはリッカルドに殺意を抱き、暗殺を実行。

相関図と登場人物(リッカルド、アメーリア、レナート)

仮面舞踏会の相関図
オペラ「仮面舞踏会」の相関図・タップで拡大表示
リッカルドボストン総督テノール
レナートリッカルドの秘書バリトン
アメーリアレナートの妻ソプラノ
ウルリカ占い女アルト
オスカルリッカルドの小姓ソプラノ

作曲ヴェルディ・初演・原作・台本・上演時間

Un ballo in maschera 仮面舞踏会

  • 作曲 ヴェルディ
  • 初演 1859年2月17日 ローマ アポロ劇場
  • 原作 ウージェーヌ・スクリーヴ「グスタフ3世、または仮面舞踏会」
  • 台本 アントニオ・ソンマ イタリア語
  • 上演時間 2時間10分(第1幕50分 第2幕30分 第3幕50分)

「仮面舞踏会」第1幕の簡単な対訳 リッカルドの秘めた愛と「自分の死」の予言

「仮面舞踏会」前奏曲

リッカルド、アメーリア、反逆者たち、それぞれの思いが表現されている。

第1場 リッカルドの、友人の妻へ秘めた愛

ボストンにある、イギリスの駐米総督邸

朝。総督邸の広間に人々が集まっている。リッカルドを讃える者もいれば、リッカルドに恨みがある者もいる。

人々
安らかに眠り、美しい夢を見てください。リッカルド様。この邸宅は、あなたの崇高な心を守っています。

「合唱・安らぎを与え」Posa in pace

反逆者たち(サミュエル、トム)
そして、お前によって落ちぶれた者たちを思い、罰を与えたいほどの憎しみがあるぞ。

小姓のオスカルが広間に来る。

小姓(オスカル)
リッカルド様がこちらに来ます。

総督、リッカルドが部屋に入ってくる。

リッカルド

民衆を大切に思っているぞ。要求があれば、適切に判断しよう。

小姓(オスカル)
舞踏会の招待客のリストができました。

リッカルド

(リストを見ながらひとりごと)アメーリア。再び彼女に会えるのか…彼女は、僕の心を奪ってしまった。

「もう一度彼女に会える」La rivedrà nell’estasi

小姓(オスカル)と人々
惜しみない愛情をこめて、我々のために考えてくれている。

反逆者たち(サミュエル、トム)
その時はまだ来ていない。

リッカルド

(オスカルに)私の合図があるまで、人々と外で待つように。

オスカルや人々と入れ替わりに、腹心の部下、レナートが部屋に入る。

小姓(オスカル)
(レナートに)あなたは自由に入ってよいでしょう。

レナート

(どうして悲しげなのか?)

リッカルド

(アメーリア…)

レナート

…総督。何か心配でも?

リッカルド

(・・・だめだ、彼はアメーリアの夫じゃないか。)なんでもない。

レナート

不安の種を存じておりますよ。この屋敷でさえ安全とは言えません。
総督を暗殺しようと企んでいる者がいるのです。

リッカルド

なんだ、そんなことか。何も問題ないさ。神がお護りくださるだろう。

レナート

あなたの人生が希望と喜びに満ちていることで、何千何万の命の運命が連鎖しているのですよ。総督がいなくなっては、この国はこの先どうなるのです。

「希望と喜びに満ちて」Alla vita che t’arride

小姓が入ってくる。

小姓(オスカル)
判事です。

リッカルド

前に通せ。(判事から書類を受け取る。)女への判決か。

判事
ウルリカと呼ばれ、黒人の血を引く女です。預言をし、人々の心を惑わします。女を追放します。判断を変えるつもりはありません。

リッカルド

(オスカルに)何か言うことはないか?

小姓(オスカル)
僕は彼女を弁護したいですね。黒い顔で空を仰ぎ、未来を予言する女です。恋する者、海の男、兵士と、皆が自分の未来を聞きたがる。

「黒い顔で空を仰ぎ」Volta la terrea

リッカルド

今夜、占い女に皆で会いに行こうではないか。私は変装していくぞ。漁師の変装の準備をしてくれ。皆も変装してくるといい。

レナート

私が総督をお守りしよう。ご自身では何も恐れておられないようなので。

人々
私たちも行きましょう。夜中の3時に。占いの巣窟へ。

反逆者たち(サミュエル、トム)
目的のために、お前を見ているぞ。いざという時に迷うことはない。

リッカルド、レナート、その場にいた人、リッカルドの暗殺を狙う者たちなど、全員が、夜に占い女の家に向かうことになった。

第2場 占い女に、「友の手により、リッカルドが死ぬ」と予言される

占い女の家

占い女が儀式をしている。人々が彼女の話に耳を傾けている。

占い女(ウルリカ)
地獄の王よ、急げ。大気を通り、雷を鳴らさずに、屋根を突き抜けてここに降りてこい。

「地獄の王よ」Re dell’abisso

漁師の変装をしたリッカルドが占い女の家に、こっそり入ってくる。

リッカルド

私が先に来たようだ。

占い女に群がる人々をかきわけて、ひとりの水夫が占いを頼む。

水夫(シルヴァーノ)
私の運命を知りたい。

占い女(ウルリカ)
まもなく、金と地位が手に入るだろう 。

リッカルドは機転を利かせて、紙に「報奨と地位を約束する」と書いて、水兵のポケットに入れる。水兵が気づき、占いが当たったと盛り上がる。

アメーリアが占いに来る。占い女に人払いをしてもらうが、リッカルドは部屋の影に隠れる。

アメーリア

秘めた恋があるのです。

占い女(ウルリカ)
何を求めるのか?

アメーリア

心の平和です。胸の苦しみを取り去りたい。すべてを裁くために神が遣わされたお方なのです。

リッカルド

(私のことだ!)

占い女(ウルリカ)
忘却の薬草がある。真夜中に、死者を葬る場所に行き、自らの手で薬草を採らないといけない。

アメーリア

それはどこにありますか?

占い女(ウルリカ)
忘却の薬草がある。真夜中に、死者を葬る場所に行き、自らの手で薬草を採らないといけない。

「三重唱・町の西の果て」Della città all’occaso

アメーリア

なんて恐ろしい。でも、今夜行きます。

リッカルド

(一人ではないぞ。私もついて行こう)

アメーリアは、占い女の家を出て行く。別の扉から、変装した集団が入ってくる。リッカルドが占い女の家に集まる約束をしていた人々だ。その中には、リッカルドに悪意を持つ者もいる。リッカルドは変装した集団に紛れ込み、今来た振り。

リッカルド

占い女よ。私は漁師だ。運命を占ってくれ。

「舟歌・バルカローレ・今度の航海は無事だろうか」Di’ tu se fedele

占い女(ウルリカ)
もうすぐ死ぬだろう。友の手によって。今日最初にお前の手を握った者が、殺すだろう。

リッカルド

冗談か、狂気なのか。よかろう。誰がこの予言を嘘だと証明できるか?
(手を差し出すが、誰も触らない)

「戯言で冗談だ」È scherzo od è follia

ひとり遅れてやってきたレナートが、占い女の家に入ってくる。リッカルドは、レナートの手を握る。

リッカルド

ここにいたぞ。彼が証明するだろう。最も忠実な友の手だ!!

レナート

リッカルド!!(感激)

水夫(シルヴァーノ)
(漁師がリッカルド総督であると気が付く)あの方だ。

人々
大英帝国の子よ。この土地に愛された人よ。幸せに治めよ、あなたに栄光と健康がありますように。

「合唱・大英帝国の子よ」O figlio d’Inghilterra

人々は、予言を否定して、総督を讃える。讃える声の中に、リッカルドに悪意を向ける不穏な声も混じっている。

「仮面舞踏会」第2幕の簡単な対訳 リッカルドとアメーリアの秘めた愛

前奏曲

アメーリアがひざまずいて祈りを捧げ、丘から降りてくる。

ボストン郊外の寂しい荒れ地

真夜中、アメーリアはひとり荒れ地にいる。

アメーリア

恐ろしい場所なの!気高いあの人の姿を忘れられる薬草をとらねば。

「あの草を摘み取って」Ma dall’arido stelo divulsa

リッカルド

(突然、現れる)私があなたと一緒にいる。あなたへの愛情がこの胸にある!

「二重唱・私がそばにいる」Teco io sto

アメーリア

なぜここにいるの?私を一人にしてください。私は他人のものです。あなたの最も信頼する友の妻なのです。

リッカルド

残酷なひとよ、思い出させないでくれ。どれほどの夜、眠れず、この不幸と戦ってきただろうか。私の命は、世界はこの一言のためにある。愛していると言ってくれ。

アメーリア

…私はあなたを愛しています。私の心から、私を守ってください。

リッカルド

なんという甘いときめき。 愛の光で、照らしてくれ。

「二重唱・なんという甘いときめき」Oh, qual soave brivido

アメーリア

死のベッドで思いを消し去ることを願っていました。私を傷つける愛なのです。

アメーリアが、誰かが近づいてくる気配に気がつく。

リッカルド

誰が来るのか?このような恐ろしい場所に。…レナート!!

アメーリア

私の夫!!(ベールを被って、顔を隠す)

レナートが、二人のそばにやってくる。

リッカルド

お前がここに!

「三重唱・お前がここに」Tu qui!

レナート

あなたをお守りするために来ました。暗殺者があなたを狙っています。脇道からひとりでお逃げください。ここはまかせて。

リッカルド

(アメーリアに小声で)私はあなたを救わなければ!

アメーリア

(リッカルドに小声で)ひとりで行ってください!

レナート

(アメーリアにむかって)あなたも、この方を危険にさらしたくないでしょう。

アメーリア

(リッカルドに小声で)一人で去らないというなら、ここでヴェールを脱ぐ覚悟があります。どうか、一人で逃げてください。

リッカルド

友よ、難しい仕事を頼みたい。ヴェールを被ったまま、この女性を町まで連れて行ってくれ。顔も見ず、一言も語りかけずに。

レナート

誓いましょう。

リッカルドは、一人で去る。残された二人。

レナート

私についてきてください。どうして震えるのですか?あなたを忠実にエスコートします。友の言葉通りに。

「私についてきなさい」Seguitemi.

アメーリア

(神よ!)

暗殺者たちがやってくる。暗殺者たちは、リッカルドを取り逃がしたことに気がつき、女性の顔を見ようとヴェールを取ろうとする。騒動の最中、アメーリアのヴェールが落ちてしまう。

レナート

アメーリア!

暗殺者は、リッカルドの密会相手が、レナートの妻だったことをあざ笑う。

反逆者たち(サミュエル、トム)
見たか、夜中にこんなところで奥さんと、恋人のようにお楽しみか。奇妙な事件だな。町ではどんなうわさが飛び交うやら。

「 見たか、夜中にこんなところで奥さんと 」Ve’, se di notte qui colla sposa

レナート

こうして報いるのか。私の妻を汚すことで。(暗殺者たちに)明日の朝、私の家に来てくれ。

暗殺者たちは去り、二人が残される。

レナート

私は誓いました。門の所まで送ると、さあ一緒に行きましょう。

アメーリア

(死の鐘のように、夫の声が響く…)

「仮面舞踏会」第3幕の簡単な対訳 レナートの怒り、リッカルドの死

第1場 レナート、復讐に心を燃やす

レナートの書斎

レナートの書斎には、リッカルドの肖像画が飾られている。レナートは、アメーリアを冷たい表情で見ている。

レナート

死んで罪を償え。血は流されなくてはならない。

アメーリア

一瞬、あの方を愛しました。ですが、あなたの名前を汚していません。

レナート

弁解はいらない。お前は死ぬのだ。

アメーリア

わかりました。死にましょう。最後に、一人息子に会わせてください。

「私の最後の願いを」Morrò, ma prima in grazia

レナート

(アめーりを見ずに)立て。お前の恥を隠すように暗闇で沈黙で、息子に会うがいい。

「立て」Alzati!

部屋に飾ってある、リッカルドの肖像画を見る。

レナート

お前の血が必要だ!裏切り者よ!忠実な友の信頼を裏切った。

「お前こそ心を汚すもの」Eri tu che macchiavi

歌詞と対訳

「お前こそ心を汚すもの」Eri tu che macchiavi|仮面舞踏会

歌の途中で、フルートとハープによる間奏が入ります。

暗殺者たちが、書斎に入ってくる。

レナート

お前たちの企みは知っている。リッカルドを殺したいのだろう。私も仲間に加えてくれ。一人息子の命を掛けてもいい、君らの仲間だ。

レナート

レナートと反逆者(サミュエルとトム)
恥を一つにまとめ、心の復讐心も一つにしよう。

「三重唱」Dunque l’onta di tutti

暗殺者たちとレナートは仲間になる。「誰がリッカルドを殺すか?」と話し合う。公平に、壺の中に名前を入れ、くじをひくことにした。アメーリアが部屋に来る。

レナート

誰が選ばれた?

「四重唱」Qual è dunque l’eletto?

レナートは、アメーリアにくじをひかせる。紙に書かれた名前は、「レナート」だった。

オスカルがレナートの使いとして、舞踏会に招待する。

小姓(オスカル)
みなさんを舞踏会に招待します。

レナート

レナートは参加するのか?

小姓(オスカル)
もちろんです。なんという輝き、なんという音楽。多くの若い美女たちが集まります。

「五重唱」Ah! Di che fulgor

舞踏会は、仮面舞踏会。仮装すれば、襲撃がたやすいと、暗殺の決行を決める。アメーリアは暗殺をどうやって知らせようか悩む。

第2場 リッカルド、アメーリアとレナートを遠くに赴任させる決意

リッカルドの書斎

リッカルドは、書類を書いている。リッカルドは、昨夜の密会がレナートにばれたことを知らない。

リッカルド

アメーリアは、無事に家にいるだろう。名誉と義務感が、私たちの間に深い溝を作ってくれた。

レナードは、イングランドに戻そう。妻も一緒に。大西洋が、私とアメーリアを遠く離してくれる。

なぜだろう。不吉な予感が心をよぎる。彼女との再会が、命取りの望みになるかもしれない。

「永遠に君を失えば」Ma se m’è forza perderti

歌詞と対訳

「永遠に君を失えば」Ma se m’è forza perderti|仮面舞踏会

アメーリアから遠く離れる決意と、心によぎる悪い予感。

小姓が、見知らぬ女性から手紙をもらったと言い、部屋に入ってくる。「リッカルドの命を狙っている者がいる」と手紙に書かれている。

リッカルド

(小姓に向かって)舞踏会に出なければ、臆病者と思われる。さあ、楽しもうじゃないか。

(アメーリアにもう一度会える。)

第3場 リッカルド、復讐心に燃える友の手によって死ぬ

豪華な舞踏会

仮面をつけたり、仮装をして、華やかに着飾った人々。

レナート

リッカルドはどのような変装をしている?

小姓(オスカル)
どんな衣装か知りたいでしょう。彼は衣装を秘密にしたがっている。だから、オスカルは知っているけど言わないよ。

「どんな衣装か知りたいでしょう。」Saper vorreste

レナート

重要な用事だ。

小姓(オスカル)
(小声で)胸にピンクのリボンをつけた、黒いマントを着ているよ。

仮面で顔を隠した、アメーリアとリッカルドが話す。

アメーリア

ここにいるなんて、お逃げを!!

「二重唱・どうしてここに」Ah! perché qui!

リッカルド

あなたが、先ほどの手紙を?あなたの名前を明かしてください。

アメーリア

いいえ!それはできません。

リッカルド

隠しても無駄だよ、アメーリア。

アメーリア

愛しています。どうかご自分を守ってください。

リッカルド

あなたが私を愛してくれるなら、私の運命など気にしない。私はあなたを救いたいのだ。明日、レナートと旅立ちなさい。イングランドに帰るのだ。これで最後の別れだ。さようなら。

アメーリア

さようなら。

レナートがふたりの間に割って入り、リッカルドを刺す。

レナート

私からの別れも受け取れ!

「私の挨拶を受け取れ」E tu ricevi il mio!

リッカルドが倒れ、あたりが騒然となる。皆にレナートが取り囲まれる。

リッカルド

レナートを捕らえないでくれ!!

(レナートに)アメーリアは汚れていない。(辞令を渡す)新たな任地に昇進して、妻と赴任するのだ。

私はアメーリアを愛していたが、傷つけるつもりはなかった。お前の名誉も、彼女の誇りも。

リッカルドは、暗殺に関わった者をすべて許す、と言い、皆に感謝して事切れる。

実際にオペラ「仮面舞踏会」の舞台を観るなら

日本ではあまり上演されません。

【公式】新国立劇場オペラ「仮面舞踏会」の公演情報

「仮面舞踏会」のオススメDVD

2016年、バイエルン国立歌劇場で上演された「仮面舞踏会」の映像。

リッカルドはピョートル・ベチャワ。

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