トリスタンとイゾルデ|あらすじと簡単解説・ワーグナー

「トリスタンとイゾルデ」は、ワーグナーが「楽劇」という新しいスタイルを確立した作品独立したアリアはなく、音楽が休みなくつづく、「無限旋律」で出来ているのが特徴です。

もともと面識のあったトリスタンとイゾルデが「媚薬」によって恋人になり、二人の世界に入り込み、死に向かう話です。

「トリスタンとイゾルデ」の見どころ、聴きどころとしては、「イゾルデの愛の死」Mild und leise wie er lächelt、「愛の二重唱」O sink hernieder, Nacht der Liebe が有名です。

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楽劇「トリスタンとイゾルデ」の簡単なあらすじ

イゾルデは、老王と政略結婚したくない → イゾルデは、トリスタンを毒殺して、自殺する覚悟をする → イゾルデの侍女が、毒薬から媚薬に取り替える → 二人は恋に落ちるが、政略結婚は避けられない

→ 二人は不倫密会する仲に → 家臣が気づき、マルケ王に密告 → 不倫が明るみに → イゾルデを好きな家臣が剣を抜いたために、トリスタンも応戦、自ら重傷を負う

→ 重傷のトリスタンは自分の城に → 船でイゾルデが到着 → ふたりは会えるが、トリスタンの死 → 別の船で、マルケ王が二人の仲を許すためにやってくる → イゾルデの死

相関図と登場人物(トリスタン、イゾルデ、マルケ王)

トリスタンとイゾルデの相関図
楽劇「トリスタンとイゾルデ」の相関図・タップで拡大表示
トリスタンマルケ王の甥、騎士テノール
イゾルデアイルランドの王女ソプラノ
マルケ王コーンウォール王バス
ブランゲーネイゾルデの侍女メゾソプラノ
クルヴェナールトリスタンの従者バリトン
メロートマルケ王の家臣テノール

作曲ワーグナー・初演・原作・台本・上演時間

Tristan und Isolde トリスタンとイゾルデ

  • 作曲 ワーグナー
  • 初演 1865年6月10日 ミュンヘン バイエルン宮廷歌劇場
  • 原作 ゴットフリート・フォン・シュトラウスブルクの同名の叙事詩
  • 台本 リヒャルト・ワーグナー ドイツ語
  • 上演時間 3時間55分(第1幕80分 第2幕80分 第3幕75分)

【解説】「トリスタンとイゾルデ」に関連する地図

トリスタンとイゾルデ 地図

第1幕 アイルランドからコーンウォールへ向かう、船での出来事

第2幕 コーンウォールのマルケ王の城の中

第3幕 ブルターニュ、トリスタンの城での出来事

「トリスタンとイゾルデ」第1幕の簡単な対訳 媚薬で恋に落ちる

前奏曲

船上

アイルランドからコーンウォールに向かう船の上。天幕が張られた簡易の船室。アイルランドの王女イゾルデは、コーンウォールのマルケ王と政略結婚をするため、船旅をしている。

若い水夫の歌声
西へ目は向かうが、東へ船は進む。

「西へ目は向かうが、東へ船は進む」Westwärts schweift der Blick: ostwärts streicht das Schiff

イゾルデ

私をからかうのは誰?ここはどこかしら。

「私をからかうのは誰?」Wer wagt mich zu höhnen?

侍女(ブランゲーネ)
もうすぐ、コーンウォールにつきます。

イゾルデ

名門は衰えてしまったんだわ。ご先祖様は役に立たない。母の力は衰えてしまったのね。魔法の香油を作るしかできないなんて。

私に力があれば、嵐を起こして船を打ち砕いてしまいたい。

「名門は衰えて」Entartet Geschlecht!

侍女(ブランゲーネ)
どうしましょう。こんなことになるのではと心配していました。何を気に病んでいるのですか。私を信用して、お話しください。

イゾルデ

空気を。息が苦しい。そこを大きく開けて。

侍女は、船室のカーテンを開ける。再び水夫の歌声が聞こえてくる。

若い水夫の歌声
爽やかな風が故郷に向かって吹く。

イゾルデ

私のために選ばれながら、私から失われた人。あの方をどう思う?

「私のために選ばれながら」Mir erkoren, mir verloren

侍女(ブランゲーネ)
どなたのことですか?

イゾルデ

あの人よ。私の視線を避けて、己の羞恥心と恥ずかしさで下を向いている人よ。教えて、どう思う?

侍女(ブランゲーネ)
トリスタンのことですか。すべてにおいて奇跡であり、人々に称えられ、比類なき英雄です。

イゾルデ

(嘲笑して)私を恐れて逃げ回っているのよ。主人のために死体になった花嫁を手に入れたのですから。私に気を遣うどころか、挨拶すらしていないわ。誇り高い方に伝えて「イゾルデを恐れよ」と。

侍女(ブランゲーネ)
挨拶に来るように、伝えるのですね。

イゾルデはブランゲーネをじっと見て見送る。

従者(クルヴェナール)
トリスタン、イゾルデの侍女がこちらに向かってくるぞ。

トリスタン

何?イゾルデだと。

「何?イゾルデだと」Was ist? Isolde?

ブランゲーネが来る。

侍女(ブランゲーネ)
トリスタン様。あなたに会うことをイゾルデ様は望んでいます。

トリスタン

長時間の移動でご迷惑をおかけしました。ですが、旅は終わろうとしています。太陽が沈む前に、私たちは国に着きます。彼女が命じることなら、何でも実行しますよ。

侍女(ブランゲーネ)
来て頂けるのでしょうか。

トリスタン

どこにいようと忠実に役目を果たしています。今、舵を離してしまったら、どうやってマルケ王のもとにたどり着くというのでしょう。

侍女(ブランゲーネ)
トリスタン、閣下。なぜ私をあざ笑おうとするのですか?はっきりと答えてください。イゾルデ様の言葉を伝えます。「」

従者(クルヴェナール)
一言いいですか?

トリスタン

(冷静に)何を言うのか?

従者(クルヴェナール)
トリスタン様は英雄なんだぞ。いくらイゾルデ様が怒ろうとも。

侍女が怒って立ち去り、その後ろ姿にクルヴェナールが歌を歌う。

従者(クルヴェナール)
「コーンウォールへの年貢のために、海に乗り出したモロルト殿。今や、アイルランドでさらし首。彼の首は、イングランドから年貢として払われた。」

「モロルトの歌・海に乗り出したモロルト殿は」Herr Morold zog zu Meere her
モロルトはイゾルデの婚約者の名前

トリスタンは、従者をとがめる。侍女は、イゾルデの元に戻る。

侍女(ブランゲーネ)
ひどい。これを受け入れないといけないの!

「これをこらえないといけないの」Weh, ach wehe! Dies zu dulden!

イゾルデ

何があったか教えてちょうだい。

侍女(ブランゲーネ)
トリスタン様は、どこにいようともお役目を果たします。持ち場を離れることはできない。とのことでした。

私がイゾルデ様の言葉を伝えると、従者のクルヴェナールにひどいことを言われました。

従者の歌を耳にし怒ったイゾルデは、侍女に昔話をする。

イゾルデ

それは私にも聞こえたわ。

アイルランドの海岸に、瀕死の男が乗った小舟がたどり着いた。瀕死の男を私は助けたわ。男が名乗った、タントリスは偽名であり、コーンウォールの騎士、トリスタンである、と見破った。そして、婚約者モロルトの仇であることにも。私は復讐を遂げようとしたが出来ず。彼は国へ帰って行った。

「タントリスの歌・一艘の小舟が」Von einem Kahn, der klein und arm
・・・タントリスは、トリスタンの偽名

このまま政略結婚をしたくない、イゾルデは、トリスタンを毒殺し、自分も死ぬ決意をする。

イゾルデ

私に必要なのは、毒薬よ。トリスタンを呼びなさい。

侍女に、飲み物に毒薬をいれるように言付ける。従者クルヴェナールが部屋に入ってくる。

従者(クルヴェナール)
ご婦人方!もうすぐ到着します。準備をしてください。

「ご婦人方!」Auf! Auf! Ihr Frauen!

イゾルデ

トリスタン様にご挨拶を、私の言葉を伝えてください。

「トリスタン様にご挨拶を」Herrn Tristan bringe meinen Gruss

トリスタンが来る。

トリスタン

何をお望みですか?

「何をお望みですか」Begehrt, Herrin, was Ihr wünscht

イゾルデは恨み辛みを言い、最後に和解の杯を交わそうと渡す。トリスタンが飲み、イゾルデも杯を奪い飲む。

イゾルデ

裏切者、あなたのために飲むのよ。

「裏切者、あなたのために飲むのよ」Verräter! Ich trink’ sie dir!

毒薬のはずが、二人は恋に落ちる。

イゾルデ

トリスタンとイゾルデ
心が波打ち広がっていく。

「心が波打つ」Wie sich die Herzen wogend erheben!

イゾルデ

(侍女に)なぜ、生きているの?この薬は、いったい何?

侍女は、イゾルデを死なせたくないため、「毒薬の代わりに、媚薬を渡した」と言う。

イゾルデ

トリスタン!なんてこと。生きなければならないの?

イゾルデは、トリスタンの腕の中で失神する。

「トリスタンとイゾルデ」第2幕の簡単な対訳 密会が発覚、トリスタンが負傷

前奏曲

マルケ王の城、中庭

自室から出てきたイゾルデとブランゲーネは様子を伺っている。

イゾルデ

まだ聞こえるの?私には遠くに行ったように聞こえるけど。

「まだ聞こえるの?」Hörst du sie noch?

侍女(ブランゲーネ)
まだ近くにいます。まだホルンの音が聞こえます。

イゾルデ様、あなたが待っている方(トリスタン)を密告者(メロート)が狙っています。メロートを警戒してください。

イゾルデ

メロートのこと?彼はトリスタンの友達よ。

愛の女神はこのように望んでいるのよ。「夜よ、来い。松明よ、消えてしまえ」あなたは見張りをしなさい。この松明が私の命だとしても、笑って消してしまえるわ。

「愛の女神は」Frau Minne will

イゾルデは、気にせずにトリスタンと会う。

トリスタン

イゾルデ、愛しい人。

「イゾルデ!」Isolde! Geliebte!

イゾルデ

トリスタン、愛しい人。

「トリスタン!」Tristan! Geliebter!

 伝統、慣習、生

 理想、愛、死

イゾルデ

が私たちの愛の邪魔をする。の光から、私は逃げ去ろうとしたわ。

トリスタン

私たちには、こそぴったりなのだ。の偽りや嘘が、ふたりを引き離すことなど出来はしない!

イゾルデ

でも、がトリスタンを起こさずにいられるのでしょうか?

トリスタン

あんな昼など、「死」に打ち負かされてしまえばいい

イゾルデ

トリスタンとイゾルデ
降りてこい、愛の夜よ。

「愛の二重唱」O sink hernieder, Nacht der Liebe

遠くから見張っているブランゲーネの歌声。

侍女(ブランゲーネ)
寂しく見張るこの夜よ。気をつけてください。やがて夜は更けていく。

「見張りの歌・寂しく見張るこの夜よ」Einsam wachend in der Nacht

イゾルデ

聞こえた、愛しい人。

「聞こえた、愛しい人」Lausch, Geliebter!

トリスタン

それならば、一緒に死のう。

「それならば、一緒に死のう」So stürben wir, um ungetrennt

イゾルデ

トリスタンとイゾルデ
おお、永遠の夜。

「永遠の夜」O ew’ge Nacht

ブランゲーネの叫び声が聞こえる。

従者(クルヴェナール)
お逃げください。トリスタン様。

「お逃げください」Rette dich, Tristan!

トリスタン

味気ない昼だ、これで最後だ。

「味気ない昼だ、これで最後だ」Der öde Tag zum letztenmal!

夜の狩りは、二人をはめる罠だった。マルケ王が帰ってきて、ふたりを見とがめる。

王の臣下(メロート)
私の忠告は正しかったでしょう。

マルケ王

本当にやったのか。愛する甥に裏切られるなんて。なぜこのようなことになったのか理由を言ってくれ。

「本当にやったのか」Tatest du’s wirklich?

トリスタン

王様、それにはお答えできません。

「王様、それにはお答えできません」O König, das kann ich dir nicht sagen

トリスタンは決心をする。

トリスタン

トリスタンが言っている国は、夜の国。イゾルデ、一緒に「夜の国」に行こう。

「トリスタンが言っている国は」Dem Land, das Tristan meint

イゾルデ

あなたに従います。「夜の国」への道を示してください

イゾルデも同意。二人はキスをする。その様子を見た、イゾルデが好きな家臣は嫉妬のあまり、トリスタンに剣を抜く。トリスタンも剣を構えるが、「自ら」剣を落として、家臣に斬られ負傷する。マルケ王が家臣を止めて、その場は収まる。

「トリスタンとイゾルデ」第3幕の簡単な対訳 トリスタンの死、イゾルデの死

前奏曲

ブルターニュにある、トリスタンの城

瀕死のトリスタン。海の見える城にいる。その場にいるのは、トリスタンと従者。

トリスタン

昔の調べだ。どうして私は目覚めたのか?

「昔の調べだ、なぜ私は目覚めたのか」Die alte Weise -was weckt sie mich?

従者(クルヴェナール)
トリスタン様!懐かしい光にいれば、死と傷から回復されますよ。

トリスタン

そう思うか?私はそうは思わない。

「そう思うか」Dünkt dich das?

従者はトリスタンを治せるのは、イゾルデだけだと思い到着を待っている。

従者(クルヴェナール)
イゾルデ様がこちらに向かっています。

トリスタン

イゾルデが来る。

「イゾルデが来る」Isolde kommt!

従者(クルヴェナール)
まだ船は見えません。

トリスタン

そのように理解しなければならないのか。

「そう思わねばならないのか」Muss ich dich so verstehn

クルヴェナールが、横たわるトリスタンの体を起こす。

トリスタン

夜の国に行ったが、昼の光が私を呼び戻した。イゾルデは、今も昼の国にいる。イゾルデ、なんという憧れ!あなたはいつになったらを消してくれるのか?

従者(クルヴェナール)
今日のうちに到着します。

トリスタン

その船にイゾルデが乗っているのか。

「その船にイゾルデが」Und drauf Isolde

イゾルデ、なんと美しい。

「イゾルデ、なんと美しい」Ach, Isolde, Isolde! Wie schön bist du!

従者はパニックになりつつ、トリスタンを励ます。イゾルデの船が到着する。従者にイゾルデを迎えにいかせる。

トリスタン

この太陽、この昼。イゾルデ!が消える。あの人のもとへ。

「この太陽、この昼」O diese Sonne! Ha, dieser Tag!

イゾルデ

私よ!トリスタン!愛しい人。ひとたび目覚めてください。

「私よ!」Ha! Ich bin’s, ich bin’s

トリスタンの死。イゾルデは、ショックのあまり気を失い、遺体の上に倒れる。後から追いついた従者は二人の姿を見て、ショックを受ける。

2番目の船がやってくる。船には、マルケ王、トリスタンを負傷させた家臣、部下たち、イゾルデの侍女が乗っていた。

従者とトリスタンを負傷させた家臣が、剣を構え、家臣メロートが死ぬ。従者はさらにマルケ王や部下に立ち向かい、従者が死ぬ。

侍女が、マルケ王にふたりに媚薬を飲ませたことを話し、王が二人を認めるために、船でやってきた。

マルケ王

皆、死んでいく。

「皆、死んでいく」Tot denn alles!

侍女(ブランゲーネ)
イゾルデ様!生きている。起きてください。

侍女が、倒れているイゾルデを抱きかかえて、話しかける。

マルケ王

イゾルデ、なぜ私にこのようなことを?

「なぜ、私にこのようなことを」Warum, Isolde, warum mir das?

イゾルデには耳に入ってこない。

イゾルデ

あの人が、穏やかに静かにほほえんでいるわ。みんなには見えないの?あの人に包まれ、私は宇宙と一体になるわ!なんという喜び。

「イゾルデの愛の死」Mild und leise wie er lächelt

トリスタンの遺体の上に、崩れ落ちるイゾルデ。イゾルデの死。

実際に「トリスタンとイゾルデ」の舞台を観るなら

日本ではあまり公演がありません。2010年に新国立劇場で公演。

【公式】新国立劇場「トリスタンとイゾルデ」の公演情報

「トリスタンとイゾルデ」のおすすめDVD

1983年、バイロイト祝祭劇場

指揮はダニエル・バレンボイム

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