椿姫【ああ、そはかの人か~花から花へ】歌詞と対訳|È strano・・・Sempre libera

椿姫・第1幕

椿姫の中で、最も有名なアリア、それが「ああ、そはかの人か~花から花へ」です。

第1幕、ヴィオレッタの職業は、高級娼婦。貴族たちを相手にパーティーを主催しています。ヴィオレッタは、田舎のお金持ちの青年、アルフレードに出会い、誠実な愛の告白を受けます。パーティーがお開きになった後、ヴィオレッタは、ふと彼のことを思い出してしまう・・・そのときに「ああ、そはかの人か~花から花へ」のアリアを歌います。

正式な社交界「ル・モンド」・・・上流階級たちが、正式に交流する場
裏社交界「ドゥミ・モンド」・・・正式に社交界に入れない者が催す、ドゥミ(半端な)社交場

ヴィオレッタが所属するのは、「ドゥミ・モンド」です。もちろん、「裏」ですから、ヴィオレッタのパーティーは高尚なものではありません。「ル・モンド」と「ドゥミ・モンド」どちらにも顔を出していた、プルーストの小説「失われた時を求めて」を読むと、高級娼婦は、あまり歓迎される存在ではないことがわかります。

貴族たちが、刹那的に愛や快楽を楽しむ場を提供する、高級娼婦のヴィオレッタに、誠実な愛の告白をするアルフレード。ヴィオレッタは、パーティーが終わってひとりになったとき、アルフレードを思い出します。

タップできる目次

「ああ、そはかの人か~花から花へ」È strano Sempre libera 歌詞と日本語訳

È strano! è strano!
In core scolpiti ho quegli accenti!
Sarìa per me sventura un serio amore?
Che risolvi, o turbata anima mia?
Null’uomo ancora t’accendeva
O gioia ch’io non conobbi, essere amata amando!
E sdegnarla poss’io
per l’aride follie del viver mio?

ヴィオレッタ

不思議ね、不思議なのよ。
彼の言葉が心に深く残っている!

本気の恋とは面倒なものでしょう?
こんな混乱した気持ちで、どうしたらいいの?

ここまで私を夢中にさせた男などいなかった
今までに知らなかった喜び、愛し愛されるなんて!

嫌だなんて言い切ることができるかしら?
愚かで浮ついた暮らしをしているからといって

È strano!「エ・ストラーノ」 ・・・ 不思議だわ

ヴィオレッタの気持ちを表現するのに、椿姫の中で、象徴的に出てくる言葉です。

第1幕 ・・・ 自分の恋心に気がつく
第2幕 ・・・ アルフレードが家にいないことに気がつく
第3幕 ・・・ 死の間際に、自分の中に不思議な力がみなぎることに気がつく

Ah, fors’è lui che l’anima
solinga ne’ tumulti
godea sovente pingere
de’ suoi colori occulti!
Lui che modesto e vigile
all’egre soglie ascese,
e nuova febbre accese,
destandomi all’amor.
A quell’amor ch’è palpito
dell’universo intero,
misterioso, altero,
croce e delizia al cor.

ヴィオレッタ

ああ、きっと彼こそあの方なのかしら
騒々しい暮らしの中で、寂しい私の心に
神秘的な彩りをもって
思い描いていた人
は!

控えめに気を配りながら
倒れた私を見舞ってくれて
経験したことのない情熱で
私の愛を呼び覚ましてくれたわ

その愛は、
神秘的で崇高な
全宇宙の鼓動であり、
苦しみと喜びがある!

croce e delizia「クローチェ・エ・デリツィア」 ・・・ 苦しみと喜び

椿姫の中で、ヴィオレッタは「愛を知った故の苦しみ、愛し愛される喜び」を体験し、死んでいきます。

A me fanciulla, un candido
e trepido desire
questi effigiò dolcissimo
signor dell’avvenire,
quando ne’ cieli il raggio
di sua beltà vedea,
e tutta me pascea
di quel divino error.
Sentìa che amore è palpito
dell’universo intero,
misterioso, altero,
croce e delizia al cor!

ヴィオレッタ

私は、若い娘として
いつの日か、とても優しい男性が
現れるという純粋で小さな望み

思い描くだけだったのに

今、空に光り輝く
その姿を見て
すべてが私にこのような
素晴らしい誤解をもたせるのよ。

互いに与え合う、愛こそ
神秘的で崇高な
全宇宙の鼓動であり、
苦しみと喜びがある!

ヴィオレッタが、高級娼婦として快楽に生きていても、歌詞の中から普通の女性としての側面が感じられます。

騒がしい日々の中で、寂しい心のどこかで、不思議な彩りを持つ男性の出現を思い描いてしまう

普通の女性の小さな願いとして、いつの日かとても優しい男性が現れて欲しい・・・

Follie! follie delirio vano è questo!
Povera donna, sola
abbandonata in questo
popoloso deserto
che appellano Parigi,
che spero or più? Che far degg’io!
Gioire,di voluttà nei vortici perire.
Gioir!Gioir!

ヴィオレッタ

馬鹿げてる、馬鹿げているわ。ありえないことよ!

哀れな女がひとりぼっちで、
パリと呼ばれる
人のあふれる砂漠に見捨てられて
今さら何を期待するの?何をするの?

楽しむのよ、快楽の渦で果てるまで。
楽しむの!楽しむのよ!

愛への期待と、期待と同時にあふれてくる不安や恐れ。

Sempre libera degg’io
folleggiar di gioia in gioia,
vo’ che scorra il viver mio
pei sentieri del piacer,
Nasca il giorno, o il giorno muoia,
sempre lieta ne’ ritrovi
a diletti sempre nuovi
dee volare il mio pensier.

ヴィオレッタ

私は、いつも自由に
楽しみから楽しみへ浮かれて遊ぶの。

私の道は快楽の道にそって
流れ行くままでいい

仲間うちで幸せに
その日その日が明けて暮れていけばいい

私の心はいつも
新しい快楽を求めて、飛んでいけばいいのよ。

これまで通りの「快楽の道」を決意しますが、心の中にアルフレードへの気持ちが・・・

同時に舞台上にアルフレードの「クローチェ・エ・デリツィア」と歌う声が響き、二重唱になります。

croce e delizia「クローチェ・エ・デリツィア」 ・・・ 苦しみと喜び

アルフレードもまた、ヴィオレッタと同様に、愛の「苦しみと喜び」を味わうのです。

高級娼婦の道を踏み外し、愛を選ぶ

高級娼婦としての「正しい快楽の道」を行こう、とするヴィオレッタ。

でも、椿姫の正式なタイトルは「ラ・トラヴィアータ」道を踏み外した女なのです。

正しい道を踏みはずし、「アルフレードへの真剣な愛」を選び、「身を引くという自己犠牲」も同時に選びます。

ヴィオレッタが自己犠牲を選んだ理由は、「アルフレードへの直接的な恋愛感情」もあったでしょうが、アルフレードの出会いで感じた「神秘的で崇高な愛の存在」を守りたかったのかもしれませんね。

高級娼婦という「お金」で愛をやりとりする生活の中で、愛し愛される「普通の愛」というのは、ヴィオレッタにとって、憧れて思い描くだけで手に入らない物でした。それゆえに、アルフレードの駆け引きのない、誠実な愛の告白は、深い感銘を与えたのでしょう。

あわせて読みたい

「椿姫」のあらすじ・人物相関図

よかったらシェアしてね!
タップできる目次
閉じる