【タンホイザー】のあらすじ・ワーグナー

タンホイザー

ワーグナーによる「タンホイザー」の正式なタイトルはタンホイザーヴァルトブルクの歌合戦です。二つの題材を組み合わせた作品。

  • ドイツに伝わる「タンホイザーの伝説」、ハイネの「タンホイザー」
  • 中世の詩「ヴァルトブルクの歌合戦」、ホフマンの「歌合戦」

以上の要素を取り入れて、ワーグナーがオペラを完成させました。

「タンホイザー」は簡単に言うと、男が俗世を捨てて桃源郷に行き、肉欲の罪を犯し、その男の罪を女が死んで償い、男が天国へと救済される話です。

第3幕のヴォルフラムが歌う「夕星の歌」が有名です。

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オペラ「タンホイザー」の簡単なあらすじ

騎士タンホイザーは、女神ヴェーヌスと桃源郷「ヴェーヌスベルク」で快楽に生きていた。だが、飽きてきたので、ヴェーヌスに別れを告げ、現実世界に戻ることに。

タンホイザーを待っていた領主の姪エリーザベトは喜ぶ。歌合戦の場で、タンホイザーは自分が「ヴェーヌスベルク」(キリスト教徒には禁断の土地)にいたことを言ってしまう。エリーザベトがかばい、タンホイザーはローマに巡礼の旅に。

エリーザベトはタンホイザーが救済されるように、自分の命を差し出すと神に祈る。罪が許されずローマから戻ったタンホイザーは、ヴェーヌスベルクに戻るつもりだった。ヴェーヌスがタンホイザーを迎え入れようとするが、エリーザベトの死によって、タンホイザーが救済されて死亡。

相関図と登場人物(タンホイザー・ヴォルフラム・エリーザベト)

タンホイザー 相関図
タンホイザー騎士テノール
ヴォルフラム騎士バリトン
エリーザベト領主の姪ソプラノ

作曲ワーグナー・初演・原作・台本・上演時間

タンホイザー Tannhäuser
タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦 Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg

  • 作曲 ワーグナー
  • 初演 1845年10月19日 ドレスデン宮廷歌劇場
  • 原作 「タンホイザー」「ヴァルトブルクの歌合戦」
  • 台本 リヒャルト・ワーグナー ドイツ語
  • 上演時間 3時間(第1幕60分 第2幕65分 第3幕55分)

「タンホイザー」第1幕 桃源郷を捨て現実へ

第1場 タンホイザー、永遠の快楽の世界を出て行く

ヴェーヌスベルクの洞窟

滝壺や小川のある広い洞窟。山や森の神、海や川の妖精などがくつろいだり、踊っている空間。

タンホイザー

ああ、もう我慢出来ない。

ここにいつからいて、どれほど時間が経ったのか、わからない。太陽が恋しいし、月を眺めたい。もう私は、季節の移り変わりを感じることができないのか!!

ヴェーヌス

何を言っているの?なんてくだらない嘆きかしら。

苦悩から解放されて、あなた自身がまるで神のように過ごしているのよ。私はあなたを愛し、あなたのために愛の世界を作ったのに!

タンホイザー

私は、今、変化を望んでいる。永遠の快楽だけが、私を幸せにするのではないのだ。あなたの世界から、私は逃げなければならない!

あなたの愛に感謝します。一緒にいれば、永遠に幸せでしょう。ここにはすべての幸福があるが、私はあるがままの自然を感じたい。

ヴェーヌス

裏切り者!私への感謝は忘れたのか!

ヴェーヌスは嘆き声を上げて、両手で顔を覆い沈黙。しばらくして、タンホイザーに魅惑的に微笑みかける。ヴェーヌスは、新しく魔法の洞窟を出現させる。

ヴェーヌス

あなたに最高の快楽の世界を与えましょう。さあ、こちらに来るのです。神にとってさえ、最上の世界よ。

あまりに美しい世界に魅了される、タンホイザー。竪琴を手に取る。

タンホイザー

私の歌はいつもあなたのために響いている。あなたが私に注いだ情熱は、永遠に私の心を燃え立たせ、全世界に対しあなたのために戦いましょう。

だが、私は自由になりたい。たとえ死や破滅に向かっても、戦いに挑みたい。あなたの国を去りたいのだ。女神よ。
(竪琴を落とす)
私を行かせてほしい。

ヴェーヌスは、激しい怒りを見せる。

ヴェーヌス

行けばいい。あなたは自由だ。止めることはしない。どうせすぐに戻ってくるもの。冷たい人間に傷つき、私をまた求めるわ。

タンホイザー

私は永遠にここには戻らない。

ヴェーヌス

本当に戻らないつもりなの!!世間はあなたを許してくれるかしらね。戻ってきなさい。あなたの救いの道は閉ざされている。

タンホイザー

私の救いは、聖母マリアにある。

ヴェーヌスと美しい世界は消える。

第2場 かつての仲間と会い、元の暮らしに戻ることにする

ヴァルトブルク城近くの谷間

突然美しい世界が消えて、タンホイザーは、山や丘、羊の群れに羊飼い、自然豊かな谷間にいる。丘の上には聖母マリア像。

羊飼い
ホルダの女神(ヴェーヌス)が山から降りて、野原を歩き回る。女神が夢に出て、目覚めると暖かな日差しが。5月が来たのだ。

巡礼者ら
イエス・キリスト。あなたのもとへ巡礼します。信仰を持つ者は、悔い改めれば救われる。

巡礼の行列が通りかかり、羊飼いが挨拶。タンホイザーはひざまずく。

タンホイザー

神よ。あなたに感謝します。

巡礼者らは通り過ぎ、羊飼いも去る。遠くで教会の鐘の音が響く。タンホイザーがひとり祈る中、狩りをしている領主と騎士たちの一行が近づいてきた。騎士たちはかつての仲間であり、その中にはタンホイザーの親友・ヴォルフラムがいた。

領主
熱心に祈る者がいるな。誰であろうか。

ヴォルフラム

あれは・・・タンホイザー!タンホイザーです。

驚く領主や一行らに、タンホイザーは無言のまま挨拶する。

領主
本当にお前なのか?お前の高慢さゆえに捨てた仲間たちのもとに戻ってきたのか?

元騎士仲間ら
今の立場は、友なのか?敵なのか?友として戻ってきたなら、歓迎しよう。

ヴォルフラム

過ぎたことはどうでもいいじゃないか。ここに戻ってきたのだから。

領主
皆が歓迎するなら、私も歓迎しよう。これまでどこにいたのだ?

タンホイザー

遠くをさまよっていました。何も聞かないでください。ここには戦うために戻ってきたのではありません。どうかこのまま行かせてください。

領主
いや、ここを去ることはならぬ。

ヴォルフラム

エリーザベトのもとにとどまるんだ。

お前は何度も歌合戦で勝利してきた。お前ばかりが栄光を勝ち取ってきた。あれは、魔力か、純粋な力なのか・・・。

とにかく、お前の歌は、貞節な姫の心を掴んだのだ。お前がいなくなってから、姫は我々の歌に心を開かなくなってしまった。

お前が戻り、姫に歌を聞かせてくれ。星のような姫が我々を再び照らしてくれるように!

タンホイザー

エリーザベト!!・・・あの人のもとに戻ろう。

タンホイザーは残ることを決め、一行は喜び合い、城に戻っていく。

「タンホイザー」第2幕 歌合戦、タンホイザーの罪が明らかに

ヴァルトブルク城の大広間(歌の殿堂)

嬉しそうにエリーザベトは広間に入る。

エリーザベト

愛しい歌の殿堂よ。挨拶しましょう。あの方がお前を見捨ててから、私にはお前が荒れ果てたものに見えたのです。

彼は戻り、お前にも私にも命を与えたのです。さあ、歌の殿堂よ。私の挨拶を受けるのです。

「貴き殿堂よ・殿堂のアリア」Dich, teure Halle

タンホイザーとヴォルフラムが広間に近づく。ヴォルフラムが途中で立ち止まり、タンホイザーをエリーザベトと会うように勧める。

ヴォルフラム

エリーザベトが待っているぞ。さあ、遠慮せずに行くんだ。

立ち去らずに遠くで待っている、ヴォルフラム。タンホイザーは駆け寄り、エリーザベトにひざまずく。

エリーザベト

どうぞお立ちになってください。こんなにも長い間、あなたはどこに?

タンホイザー

遠い場所でした。ですが忘れ去りたいのです。あなたと再び会えたのは、崇高な奇跡でした。

エリーザベト

私はこの奇跡を讃えましょう。

少し時間を下さい。まるで夢の中にいるようで無力なのです。かつて私は歌手たちの歌を聞くのが好きでした。素晴らしい歌を。

ですが、あなたは違ったのです。あなたの歌は私に生命を呼び起こし、これまでにない感情と欲望を引き起こしました。あなたの歌への歓喜を前にして、これまで愛していたものを愛せなくなったのです。

あなたが去り、私は心の平和を失いました。あなたは私にひどいことをなさったですのよ。

タンホイザー

愛の神を讃えて下さい。あなたの心をかき乱したのは、愛の神であり、私をあなたへ導いたのも、愛の神です。

ヴォルフラム

(私の望みは消え去ったな・・・)

タンホイザーはエリーザベトのもとを離れ、ヴォルフラムと抱き合う。タンホイザーとヴォルフラムは立ち去る。入れ替わりで領主がやって来る。

領主
エリーザベト。殿堂でお前に会うとは。しばらく来なかったのに。ついにお前の気持ちを打ち明ける気になったのか?

エリーザベト

まだお話しすることは出来ません。

領主
私に打ち明けるのはいつでもいいだろう。さあ、歌合戦が開かれるのだ。そろそろ領地の貴族たちが集まってくる。

領主やエリーザベトに迎え入れられて、着飾った貴族たちが広間に現れる。

領主
歌合戦を始めよう。テーマは「愛の本質」だ。最も価値ある答えを導いた者は、エリーザベトから褒美をもらうことができるだろう。

タンホイザーとヴォルフラムは左右に分かれて座り、その様子を貴族たちが見守っている。

4人の小姓
ヴォルフラム、始めて下さい。

ヴォルフラム

こちらにお集まりの気高い皆様を見れば、私の心は燃え上がるばかり。勇敢な騎士、貞淑なご婦人、私はこの眺めに酔いしれているのです。

星空を眺めれば、ひときわ輝く星がひとつ。私の精神は敬虔な気持ちになります。そして、見て下さい。奇跡の泉(女)を。私から優美な喜びを引き起こすのです。

私はこの泉(女)を汚したくありません。この歌から高貴な方たちは見るでしょう。「愛の最も純粋な本質」を。

騎士と婦人ら
素晴らしい。この歌に褒美を!

タンホイザー

ヴォルフラムよ。私も同じ幸せを感じたことがある。同じように、泉(女)の徳を讃えよう。

だが、私は熱い欲望なしに泉(女)に近づくことが出来ないのだ。渇きを癒やすために、ためらいなく口づけしよう。永遠に欲望に燃え、永遠に泉(女)を味わうのだ。

ヴォルフラム。これが「愛の本当の正体」だ。

エリーザベトはタンホイザーに賛同しようとするが、会場は静まりかえっているので、拍手を控える。

別の騎士
ヴォルフラムが言う、泉(女)の姿が本当のものだ。泉(女)への渇望に捕らわれている、お前に泉(女)の本当の姿がわかるものか。

泉(女)は徳のある存在なのだ。お前は好きなだけ泉を崇めるがいい。だが、お前の情熱を癒やそうと、泉(女)に口づければ、奇跡の力を失うだろう。

泉(女)からは、口ではなく心を豊かにするのが正しいのだ。

騎士と婦人ら
万歳。褒美はあなたのものだ!

タンホイザー

お前がそんなことを言うのは、快楽を体験したことがないからだ。

別の騎士
なんだと。剣を持ってこい。

タンホイザーと騎士が言い争いを始めて、広間が混乱。ヴォルフラムが声を発すると、静まりかえる。

ヴォルフラム

天よ。私の歌に神聖な力を授けて下さい。高貴で純粋な集まりから、汚れた罪を追い払い下さい!!

タンホイザー

愛の神よ、この哀れな者たちに愛の喜びを教えてあげてくれ。行け、行くのだ。本当に愛を知りたいなら、ヴェーヌスの山に行け!!

騎士と婦人ら
この男は、禁断の土地・ヴェーヌスベルクにいたのだ!

大広間から足早に立ち去る婦人ら。エリーザベトは動揺しているが、立ち去らない。領主、騎士ら、男性たちは集まり話し合っている。人々が騒然とする中で、タンホイザーは歌い終わっても、陶酔感が抜けない。

領主、騎士ら
ヴェーヌスベルクにいたとは。あいつは追放せねばならない。

エリーザベト

おやめください。

領主、騎士ら
あの者をかばうのか。貞淑な乙女がかばうのか!!お前が一番酷い裏切りを受けたのに。彼に救いはなく、罰を受けなければならない!!

エリーザベト

離れて下さい。あなた方は、彼の裁判官ではありません。清い乙女の言葉を聞いて下さい。彼は反省を示すことで、救済されるべきです。

タンホイザーはエリーザベトの言葉に感動。

タンホイザー

なんと愚かな私。神が使わした清らかな天使。私を救いたまえ。

領主、騎士ら
彼に救いはなく、罰を受けなければならない!!

エリーザベト

彼は反省を示すことで、許されなくてはなりません。

遠くから巡礼者たちの歌声が、広間に聞こえてくる。

巡礼者らの声
反省をする者は救われなければならない。

広間の人々が巡礼者たちの声に聞き入ると、突然、タンホイザーに光が注がれる。

タンホイザー

ローマへ!

タンホイザーは足早に立ち去る。

全員
ローマへ!

「タンホイザー」第3幕 エリーザベトの死により、タンホイザーが救済

ヴァルトブルク城近くの谷

夕暮れ時、聖母像の前で、エリーザベトは祈りを捧げている。

ヴォルフラム

(ここで祈っていると思った。エリーザベトはタンホイザーの帰りを待っている。彼が救済されるようにと。)

巡礼者たちの一行が通りかかり、エリーザベトは必死に探すが、タンホイザーはいない。

エリーザベト

彼は帰ってこない。

聖母マリアよ。私の願いを聞き入れて下さい。この地より私を迎え入れて下さい。

天使として迎え入れられることで、マリア様にお目にかかってお願いしたいのです。「タンホイザーが救われるように」と。

ヴォルフラム

エリーザベト。しばらく私と一緒にいませんか?

エリーザベトは無言で断り、山を下りていく。ひとり残った、ヴォルフラム。

ヴォルフラム

暗闇があたりを覆うとき、最愛の星が現れる。

私の夕星(ヴェーヌス)よ。彼女が夜道を歩くとき、柔らかく光ってくれ。彼女が地上を去り、天使になるまで。

「夕星の歌」O du, mein holder Abendstern

あたりが暗くなる。身なりがボロボロの巡礼者がヴォルフラムに話しかける。

ヴォルフラム

巡礼の列から離れてひとりさまようとは、何者なのか?

タンホイザー

私だよ。ヴォルフラム。

ヴォルフラム

贖罪をせずに、ここに戻ってきたのか!!

タンホイザー

心配するな。ここに戻るつもりはない。これから、ヴェーヌスベルクに行くつもりだ。

どの巡礼者よりも贖罪の思いを抱いて、私はローマを目指した。どの巡礼者よりも苦難の道を選んだ。だが、ローマに行ったけれど、私は許されなかった。枯れた杖に新緑の芽が芽吹いたら私は救われるそうだ。

ヴェーヌス。さあ連れて行ってくれ。

「ローマ語り」Inbrunst im Herzen

ヴォルフラム

待て!諦めるな。

幻想的な雰囲気。

タンホイザー

柔らかな風!優しい香り。おまえは感じないのか?

ヴェーヌス

よく来たわね。タンホイザー。さあ行きましょう。

ヴォルフラム

地獄の魔力よ。男を惑わせるな!・・・タンホイザー。お前のために地上で祈っていた天使は、まもなくお前の頭上から見守るだろう。エリーザベト!!

タンホイザー

(我に返り)エリーザベト!!

ヴェーヌス

ああ、消えてしまう。

ヴェーヌスは消え去り、遠くからエリーザベトの棺が領主や貴族らによって運ばれてくる。

タンホイザー

聖なるエリーザベト!!

タンホイザーは、棺の中にある、エリーザベトの遺体に覆い被さると、息絶える。

巡礼者たち
奇跡が起きた。僧侶が持つ、枯れた杖に新緑の芽がはえた。タンホイザーは救済された。

領主、騎士ら、巡礼者ら
タンホイザーは救済され、天国に行った。

実際に「タンホイザー」の舞台を観るなら

2019年に新国立劇場で「タンホイザー」の公演がありました。

【公式】新国立劇場「タンホイザー」の公演情報

「タンホイザー」のおすすめDVD

小学館が発売する、人気シリーズのDVD付きの本です。

収録映像は、バイロイト祝祭劇場のもの。

映像には、日本語字幕がついており、初心者でもわかりやすい、解説本は64ページ。

気軽に「タンホイザー」を楽しめます。

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