【シモン・ボッカネグラ】あらすじと対訳・ヴェルディ

シモン・ボッカネグラ

「シモン・ボッカネグラ」は初演が失敗に終わった作品ですが、ヴェルディが気に入っていた題材なので、初演から24年後に台本をアリゴ・ボーイトによって改訂し、新たに世に出されました。ちなみにボーイトは、「オテロ」「ファルスタッフ」の台本を手がけています。

「シモン・ボッカネグラ」の中心にあるのは「貴族と平民の対立」です。

年配の男性が主役という「地味なオペラ」ですが、オペラの裏にある政治的な対立や、25年に渡る人間模様など、じっくり見ると面白いですよ。

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オペラ「シモン・ボッカネグラ」の簡単なあらすじ

平民のシモンと貴族のフィエスコの娘マリアは、子供をもうけていたが、父親のフィエスコには結婚を反対されていた。隠して育てていた娘は行方不明になり、マリアは死亡。悲しみの中、シモンは選挙で、ジェノヴァの総督に選ばれる。

25年後、フィエスコ(アンドレーア)は、自分の孫と知らずに、アメーリア(行方不明のシモンの娘)を養女として育てていた。シモンとアメーリアは、偶然、親子の再会を果たす。平民と貴族の対立がある中、平民側の裏切りによって、シモンは毒殺される。

相関図と登場人物(シモン・アメーリア・ガブリエーレ)

プロローグ

シモン・ボッカネグラ 若い頃の相関図
相関図をタップすると、大きく表示できます。

25年後(第1幕・第2幕・第3幕)

シモン・ボッカネグラ 25年後の相関図
こちらもタップで大きく表示できます。

シモン・ボッカネグラの話がわかりにくいのは、次のことがあるからです。

  • オペラの中で、25年の時間経過
  • フィエスコが、アンドレーアと偽名を使う
  • 妻の名前が「マリア」で、娘の名前も「マリア」
  • 行方不明の娘「マリア」は、アンドレーア(フィエスコ)の養女となり「アメーリア」と名乗る
シモン

海の男だったシモン。

結婚を認めてもらうために、総督になる決意をします。

シモン

25年後の総督シモン。

毒を盛られ、体の異変を感じたときに「海が恋しい。なぜ、海で死ぬことができなかったのか?」とつぶやきます。

シモン・ボッカネグラ総督、平民バリトン
マリア・ボッカネグラ(アメーリア・グリマルディ)シモンの行方不明の娘ソプラノ
ガブリエーレ・アドルノ貴族テノール
ヤーコポ・フィエスコ貴族バス
パオロシモンの側近、平民バリトン

作曲ヴェルディ・初演・原作・台本・上演時間

シモン・ボッカネグラ Simon Boccanegra

  • 作曲 ヴェルディ
  • 初演 1857年3月12日 ヴェネツィア フェニーチェ歌劇場
  • 原作 アントニオ・ガルシア・グティエレスの戯曲「シモン・ボッカネグラ」
  • 台本 フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(改訂版アリゴ・ボーイトイタリア語
  • 上演時間 2時間10分(プロローグ25分 第1幕50分 第2幕30分 第3幕25分)

【解説】「シモン・ボッカネグラ」に関わる地図

シモン・ボッカネグラ 地図
  • ジェノヴァ・・・オペラの舞台
  • ピサ・・・アメーリアが孤児として過ごした場所

シモンとアメーリアの再会の場面で、アメーリアによって、かつて彼女が幼い頃にピサにいたことがわかります。

「シモン・ボッカネグラ」プロローグの簡単な対訳 妻の死、行方不明の娘

ジェノヴァの広場

夜、薄暗い広場。広場から教会や屋敷が見渡せる。パオロと男が「どの男を選挙に出そうか」と相談している。

高利貸しの男がいいのでは?

パオロ
いいや、民衆に人気があって、選挙に勝てる男を出そう。海賊(シモン)がいい。

シモンでもいいが、こちらに見返りは?

パオロ
金、権力、名誉だ。

ふたりは握手して、男が去って行く。広場に急いでやってくるシモン。パオロと会う。

シモン

急に呼び出すとはなんだね?

パオロ
選挙に出て、総督になるつもりはないか?

お前の妻、気の毒なマリアのことを考えろ。君が総督になって命じれば、父親に幽閉されたマリアを助けることができるだろう。

選挙で勝てるように準備は整えた。君への頼みは、俺に権力を分けてくれることだ。

シモン

マリアのために!よし、選挙に出よう。

シモン、立ち去る。パオロのもとに人々(平民)が集まってくる。

選挙はどうする?誰に投票するべきか?

パオロ
シモン・ボッカネグラだ。

俺たちと敵対する、貴族のフィエスコ側はどう出るだろうか?

パオロ
彼らは沈黙するしかないさ。不気味なフィエスコの屋敷を見てみろ!

彼の娘マリアが閉じ込められ、嘆き声を上げている。屋敷から聞こえる、唯一の声だ。

十字を切って立ち去ろう。そうすれば悪魔を追い払える。

「不気味な屋敷を見るがいい」L’atra magion vedete?

人々が立ち去る。自宅の外で、貴族フィエスコが嘆いている。

フィエスコ

娘は死んでしまった。娘を誘惑した、シモンが全て悪いのだ。

引き裂かれた父の胸は、苦悩の中にある。私の大切なマリアは天国に行ってしまった。

「引き裂かれた父の心は」Il lacerato spirito

屋敷から悲しむ使用人らが出てきて、広場を通り過ぎていく。広場に喜んだ様子のシモンが来る。

シモン

民衆が私の名前を呼んでいる。選挙に勝てるぞ。勝てば、結婚を許してもらえるだろう。

フィエスコ

シモン。どのような運命がお前をここに連れてきたのか。私を怒らせるためなのか。

シモン

彼女のために、私は栄光を掴もうとしています。どうか、私たちの結婚を認めて下さい。和解しましょう。

フィエスコ

たとえお前が王になろうとも、娘はやらない。

和解したいだと?!それなら、娘の子供を渡せ。子供を渡せば、私が育ててやる。そして、お前を許してやろう。

シモン

海岸で密かに、乳母に預けて娘を育てていました。ある日乳母が死に、娘は行方不明に。今、探し続けているところなのです。

「二重唱」Del mar sul lido tra gente ostile

フィエスコ

娘の子を渡さないなら、許すことはできない。

フィエスコは立ち去るふりをして、シモンの様子を伺う。

シモン

なんて無慈悲なフィエスコ。マリアのような純真な娘が生まれたのが、信じられない。彼女に会いたい。勇気を出そう。

「なんて無慈悲なフィエスコ」Oh de’ Fieschi implacata

シモンはフィエスコの屋敷の扉を叩き、中に入る。

シモン

フィエスコの屋敷の鍵が開いている。なぜ?・・・わからないが、マリアを探そう。

屋敷の中で、シモンはマリアの遺体を見つける。広場からは、選挙で総督に選ばれたシモンを讃える民衆の声が響く。

「シモン・ボッカネグラ」第1幕の簡単な対訳 25年後、父と娘の再会

第1場 行方不明の娘は、貴族の養子に。親子の再会

海辺にある、グリマルディ家の庭

夜明け、海が見える庭園。グリマルディ家の養女、アメーリアはひとりで、恋人が来るのを待っている。

アメーリア(マリア)

薄暗い朝でも、星と海は微笑みかけてくれる。今は誇り高い家の娘になったけれど、かつて暮らした粗末な家が忘れられない。

愛しい恋人はまだ来ないのかな。彼は涙を拭いてくれる。

「暁に星と海は微笑み」Come in quest’ora bruna

ガブリエーレ

(ガブリエーレの声)
星のない空だ、花のない野原だ。愛のない魂は。

「星のない空」Cielo di stelle orbato

遠くからガブリエーレが庭にやって来る。

ガブリエーレ

愛しい人。すまない。君と僕のために、大切な準備をしていたので、遅くなったよ。

アメーリア(マリア)

準備って何?!恐ろしいわ。私の養父とあなたは、何かをしているでしょう。

ガブリエーレ

声を落としてくれ。他の人に聞かれたら大変だ。

アメーリア(マリア)

海の青さを見てください。ジェノヴァの町は、あなたの敵に支配されているのですよ。愛を考えてください。

「二重唱」Vieni a mirar la cerula

ガブリエーレ

天国から来た天使のような君。僕の憎しみのもとを探らないでおくれ。愛を考えてください。

庭から、屋敷に向かう使者が見える。

アメーリア(マリア)

あ!総督の使者だわ。総督が私に縁談を持ってくるようなの。彼の部下が私を好きらしいわ・・・

恐ろしいことになる前に、私を婚礼の祭壇に連れて行って。

ガブリエーレ

もちろんだとも。

ガブリエーレとアメーリアは愛を誓い合う。アメーリアが立ち去り、ガブリエーレとアンドレア(フィエスコ)が立ち話。

フィエスコ → アンドレーア(偽名)

フィエスコ(シモンの亡くなった妻の父親)は、シモンと敵対したために、アンドレーアと名前を変えています。

フィエスコ(アンドレーア)

君はアメーリアに結婚を申し込むのか。だが、娘には秘密がある。

娘が養子であることは知っているだろうが、アメーリアは、我が家とは血のつながりのない、卑しい身分(平民)の娘なのだ。

ガブリエーレ

それならなぜ、彼女はグリマルディの名前を継いでいるのですか?

フィエスコ(アンドレーア)

総督(シモン)が決めたことのせいだ。

アメーリアがグリマルディ家の名前を継ぐことで、我が家の財産を守ることができている。

ガブリエーレ

わかりました。彼女を愛しているので、結婚を望みます。

フィエスコ(アンドレーア)

こちらに来なさい。君を祝福しよう。

「二重唱」Vieni a me

ガブリエーレ

あなたの声は、古代の敬虔な響きがします。あなたの言葉をこれからも忠実に覚えているでしょう。

総督の来訪を知らせる、トランペットの合図。

フィエスコ(アンドレーア)

君を総督に見られてはまずい。さあ、立ち去りなさい。

ふたりとも庭を立ち去る。


総督シモンとパオロなどが庭に現れる。

シモン

従者たちよ、用事があるので、君たちは立ち去りたまえ。

パオロや従者らが去る。アメーリアがやってきて、パオロが去り際に彼女を見つめる。

パオロ
(アメーリア、綺麗な人。)

シモンとアメーリアが話す。

シモン

君がアメーリアか。亡命中の君たちの家族は大丈夫か?君のために、家族の恩赦の手紙を書こう。

あなたのような美しい人は、ここにいては退屈では?世界を見てみようと思わないのですか?

アメーリア(マリア)

いいえ、退屈ではありません。私はある男性と恋をしており、幸せに暮らしています。

ですが、私の家の財産を狙って、結婚を求める者がいるのです。

シモン

パオロだな。

アメーリア(マリア)

あなたは私の運命に同情してくれました。私の秘密を話しましょう。実は、グリマルディ家の者ではないのです。

海辺の粗末な家の孤児でした。老女に育てられていたのですが、亡くなりました。亡くなる間際に、「これがあなたの母だ」と絵姿を渡してくれたのです。

二重唱「粗末な家の孤児として」Orfanella il tetto umile

シモン

(娘かもしれない。)
それで、家には他の者は訪ねてこなかったのですか?

アメーリア(マリア)

度々、船乗りの男(シモン)が訪ねてきていました。

シモン

老女の名前は、ジョヴァンナでは?絵姿は、この人では?

アメーリア(マリア)

同じものだわ。

シモン

私の娘よ!!その名を呼ぶだけで胸が高鳴る。

「二重唱」Figlia!… a tal nome palpito

アメーリア(マリア)

お父さん、あなたは孝行な娘を見るでしょう。

シモンとアメーリアは抱き合って再会を喜ぶ。アメーリアはその場を離れ、娘の姿をじっと見送るシモン。

パオロが返事を聞きにやって来る。

パオロ
彼女の返事を教えて下さい。

シモン

アメーリアとの結婚は諦めろ。命令だ!

シモンは足早に立ち去る。パオロがひとりでいると、部下が近づいてくる、

パオロ
命令だと!誰のおかげで総督になれたと思っているんだ。アメーリアを誘拐してやる。おい、報酬をはずむから手伝え。

わかった。手伝おう。

第2場 敵対する、貴族と平民。平和を望む、総督シモン

総督の宮殿、大会議室

中央に総督のシモンが座り、片側に貴族の議員ら、もう片側に平民の議員らが向かい合うように座っている。

シモン

ヴェネツィア共和国と和平を考えてみないか。イタリアの中で、血を流し戦っても仕方がない。

議員ら
和平はありえない。戦争だ。我らは、ジェノヴァ共和国の人間だ。

会議室の外から、騒ぎ声が聞こえる。

広場で騒動が起こっているぞ。あの男は、ガブリエーレか?

誘拐を手伝った男
パオロ、お前はここを去った方がいい。

パオロ
(そうだな。)

パオロが会議室から出て行こうとするのを見て、シモンは命令を出す。

シモン

会議室から、誰も出すな!!

会議室には、広場からの声が響いてくる。平民と貴族が争い、それぞれ罵り会う。

シモン

伝令よ、民衆に伝えろ。「貴族であろうと、平民であろうと、私は恐れない。剣を置いて、ここに来るがいい」と。

民衆が会議室になだれ込んでくる。ガブリエーレとアンドレーア(フィエスコ)が平民たちによって捕らえられている。

フィエスコ(アンドレーア)

・・・

ガブリエーレ

確かに、私は男を殺した。

その男が、グリマルディ家の令嬢(アメーリア)を誘拐したからだ。

シモン

(なんてこと!私の娘が!)

ガブリエーレ

誘拐犯は黒幕を言わずに死んだ。アメーリアはいまだ見つからない!!犯人はお前(シモン)だろう!

シモン

愚か者が。

ガブリエーレが剣を取り出し、総督に襲いかかる。アメーリアが会議室に飛び込み、ふたりの間に割って入る。

アメーリア(マリア)

止めて。総督、お許し下さい。ガブリエーレにお許しを。

ガブリエーレは衛兵に捕らえられる。

シモン

その男を傷つけないように。

アメーリア。あなたは誘拐されたというのに、どうやって逃げたのですか?

アメーリア(マリア)

心地よい夕暮れに海辺を散歩中、男らに誘拐されました。ただ、見張りの男が私の知っている男だったのです。

その男は小心者。「明るみになれば、大変なことになる」と言うと、私を逃がしてくれました。

実行犯は彼らですが、本当の悪人はこの中にいます!!

「心地よい夕暮れに」Nell’ora soave che all’estasi invita

会議室の人々がざわめく。

アメーリア(マリア)

わかりました。今、顔色を変えた男を見つけました。

「アメーリアを誘拐したのは、貴族なのか、平民なのか」で会議室は紛糾する。

シモン

平民よ、貴族よ。
海や自然の豊かなこの国で、争うのか。平和と愛こそ、大事なのではないか。

「平民よ、貴族よ」Plebe! Patrizi!

アメーリア(マリア)

(フィエスコに向かい)総督と和解をしてください。

フィエスコ(アンドレーア)

(なんてことだ。この国は海賊の手の中だ。)

ガブリエーレ

(アメーリアが無事でよかった。)

人々
総督の言葉は信頼できる。怒りの心も穏やかになる。

シモンの言葉を聞き、民衆は静かになる。

ガブリエーレ

総督。剣を渡します。

シモン

真相を明らかにするために、今夜だけ囚人でいてくれないか。剣は君が持っていなさい。

ガブリエーレ

わかりました。

シモン

パオロ!!!(恐ろしい声で)

お前は民衆に信頼されている。だから、私に協力しなさい。

私は悪人が誰かわかった。

私の怒りがその人物に向かうように、私の言葉を繰り返してくれ。呪われよ!!

パオロ
(顔は青ざめて)呪われよ!

人々
呪われよ!

「シモン・ボッカネグラ」第2幕の簡単な対訳 シモン、毒を盛られる

宮殿内、総督の部屋

夜、テーブルには水差しとコップが置いてある。総督シモンの部屋に忍び込んだ、パオロは水差しに毒を入れる。

パオロ
俺は自分を呪ってしまった。

シモンよ、お前の水差しに毒を入れたぞ。そして、暗殺者を用意してやろう。毒か、剣か、死を選ぶといい。

「自分を呪ってしまった」Me stesso ho maledetto!

パオロのもとに、フィエスコとガブリエーレが連れられてくる。

フィエスコ(アンドレーア)

パオロ、お前は残忍な顔をしているな。

「二重唱」I tuoi sguardi son truci

パオロ
俺は、お前が総督に恨みを抱いていることを知っている。ここは総督の部屋だ。隠れて待っていれば、シモンが寝た隙に殺すことができるぞ。

フィエスコ(アンドレーア)

私に悪事をさせようとしているのか?考えるまでもなく、断る!!

パオロ
断るのか、それならば牢に戻れ。

フィエスコは牢に戻っていく。ガブリエーレも戻ろうとするが、パオロに引き止められる。

ガブリエーレ

卑劣な計画には乗らない。

パオロ
いいのか?シモンは、アメーリアに目をつけているぞ。彼女はこの宮殿にいる。さあ、あいつを刺すといい。

パオロは、総督の部屋を出て行く。部屋に残った、ガブリエーレ。

ガブリエーレ

怒りを静めることができない。アメーリアが清らかなままでいますように。もしアメーリアが汚れれば、彼女に会うことは二度とないだろう。

「我が心に炎が燃える」Sento avvampar nell’anima

総督の部屋にアメーリアが入ってくる。

アメーリア(マリア)

ガブリエーレ、なぜここに?

ガブリエーレ

君こそ、なぜここに?

アメーリア(マリア)

総督と私の間に、あなたが心配することは何もありません。この秘密はまだ言えないのです。

ガブリエーレ

話してくれ、君の清らかな心で、恋人である私に喜びを取り戻させてくれ。

「二重唱」Parla, in tuo cor virgineo

アメーリア(マリア)

疑うことなど何もないのです。嵐を取り去ってください。
(ラッパの音)
総督が来る!去って下さい。

ガブリエーレが去り、シモンが自室に戻ってくる。

シモン

娘よ。先ほど、お前は泣いていたね。だが、あの若者は私の敵だ。

アメーリア(マリア)

勇敢な人で、私を愛してくれています。彼を失うくらいなら、一緒に死にます。

シモン

ああ、娘とやっと再会できたのに、敵が娘を奪っていくのか。彼が悔い改めてくれれば、和解することができるだろう。

しばらく、ひとりにしてくれ。

アメーリアは部屋を出て行く。

シモン

国を統治するのはこんなにも大変なのか。ああ、のどが渇く。なぜか、水が苦いな・・・そして、眠くなってきた。

水差しから水を飲み、眠りにつく。隠れていた、ガブリエーレが出てくる。

ガブリエーレ

眠っている。シモンは、亡くなった父親の敵なのに・・・何かが、刺すのをためらわせる。

部屋に戻ってきたアメーリア。

アメーリア(マリア)

眠っている老人の命を奪うのですか。総督と私の間には、清らかな愛しかありません。

シモンが目覚める。

シモン

私を刺すがいい。だが、君はすでに私に復讐している。大切な娘を奪ったのだからな。

ガブリエーレ

アメーリアの父親だったのか。許してくれ、僕の嫉妬心を。総督、僕に死を与えてください。

「三重唱」Suo padre sei tu

アメーリア(マリア)

(お母さん、天国から娘を見守ってください。お父さんが許してくださいますように。愛のためにしたことです。)

シモン

(私の政敵に手を差し伸べなければならないのか。そうだな。平和のために憎しみを静めよう。)

部屋の外から、貴族派の人々が集まり大きな声を上げている。

貴族派の人々の声
武器を持て。シモンを倒すのだ。

シモン

ガブリエーレ、君も外の仲間に加わるといい。

ガブリエーレ

あなたと敵対するなんて、できません。共に戦います。

シモン

それなら、外の仲間に私の言葉を届けてくれ。君の勇気に対して、娘が最高の褒美となるだろう。

アメーリア(マリア)

お父様!!

シモンとガブリエーレは武器を手にして、出て行く。

「シモン・ボッカネグラ」第3幕の簡単な対訳 娘の結婚を祝福、シモンの死

総督の宮殿

夜明け、宮殿内は慌ただしく、人々が勝ちを喜んでいる。フィエスコが牢から出てくる。

人々の声
シモンが勝った。総督が勝ったぞ。

フィエスコ(アンドレーア)

貴族派は負けた。

フィエスコが釈放されているところに、パオロが牢に連行されていく。

フィエスコ(アンドレーア)

パオロ、お前はどこに連れて行かれるのか?

パオロ
処刑台さ。俺が貴族派を手引きして、宮殿に入れたんだ。だが、俺より先にシモンが死ぬさ。彼に毒を盛ったからな!!

ああ、結婚式の賛美歌が聞こえる。・・・俺が誘拐した女(アメーリア)と、ガブリエーレと結婚するなんて。

フィエスコ(アンドレーア)

お前が、アメーリアを誘拐したのか!!!汚らわしい男だ。


体調が悪い様子のシモン。宮殿から海を見て、嘆いている。

シモン

体に不穏な炎が駆け巡っているようだ。

潮風が心地いい。かつて海で過ごした日々が懐かしい。なんと海が恋しいことか。なぜ海で死ぬことができなったのか。

「海のそよ風よ」Oh refrigerio!

シモンにフィエスコが近づく。

フィエスコ(アンドレーア)

お前には海のほうがよかったのかもな。遠い昔、私の声を聞いたことがあるはず。私が誰かわからないのか。

シモン

フィエスコか。やっと会えたぞ。

私たちを天使が繋いでくれる。友情の絆でもって。アメーリア・グリマルディは、あなたの本当の孫なのですよ。・・・あなたは涙を?

フィエスコ(アンドレーア)

そうだ。泣いている。このような喜びを、なぜ早く知ることができなかったのか。

「二重唱」Piango, perché mi parla

シモン

あなたを抱きしめましょう。マリアの父上よ。あなたの許しは私の魂には香油になるのです。

フィエスコ(アンドレーア)

大変だ。君は裏切り者によって、毒を盛られてしまったぞ。

シモン

死の予感は感じていました。

娘が来る。彼女には知らせないで下さい。娘を祝福してやりたいのです。

シモンとフィエスコがいる場所に、アメーリアとガブリエーレがやって来る。ふたりの結婚を祝福する議員たちも一緒に。

アメーリア(マリア)

(フィエスコに)あなたがなぜここに?

シモン

娘よ、お前を産んだ母親の父が、この方(フィエスコ)だよ。

アメーリア(マリア)

嬉しいわ。憎しみが終わり、皆が和解できたのですね。でも、なぜあなたは悲しそうなのです?

シモン

お前に大きな悲しみが近づいている。私に最期の時が迫っている。

偉大なる神よ、彼らを祝福したまえ。

「偉大なる神・四重唱」Gran Dio, li benedici

アメーリア(マリア)

そんな、死なないで下さい。

ガブリエーレ

義父上、こんなにも早く幸福の時間が過ぎるなんて。

フィエスコ(アンドレーア)

なんてむなしい。この世は。

シモン

議員たちよ。私の最後の言葉を聞いてくれ。

総督を引き継ぐのは、ガブリエーレだ。フィエスコ、よろしく頼む。マリア!!

アメーリア(マリア)

お父さん!

フィエスコが、バルコニーから民衆に話しかける。

フィエスコ(アンドレーア)

ジェノバの人々よ。総督が、ガブリエーレになった。彼を祝福してくれ。

人々
総督はシモンだ。

フィエスコ(アンドレーア)

シモンは亡くなった。彼のために祈ってくれ。

実際に「シモン・ボッカネグラ」の舞台を観るなら

日本では滅多に上演されません。2014年、ローマ歌劇場、ムーティ指揮で日本公演がありました。

【公式】ローマ歌劇場オペラ「シモン・ボッカネグラ」の来日公演情報

「シモン・ボッカネグラ」のおすすめDVD

2019年、ザルツブルク音楽祭。

指揮は、ワレリー・ゲルギエフ

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