簡単にわかる「セビリアの理髪師」あらすじと相関図|ロッシーニ

「セビリアの理髪師」は、オペラ・ブッファ(喜劇)を代表するオペラです。魅力的な登場人物にロッシーニの軽やかな音楽がついていて、初心者でも簡単に楽しめる作品です。

目次

オペラ・歌劇「セビリアの理髪師」の簡単なあらすじ

後見人バルトロによって、家に軟禁状態のロジーナ。彼女に一目惚れしたアルマヴィーヴァ伯爵が、何度も変装してバルトロ宅を訪れ、最終的にロジーナと結ばれる。

「セビリアの理髪師」の相関図

セビリアの理髪師の相関図
オペラ「セビリアの理髪師」の相関図

「セビリアの理髪師」の登場人物

アルマヴィーヴァ伯爵伯爵テノール
ドン・バルトロロジーナの後見人・医師バス
ロジーナ身寄りのないお嬢さんメゾソプラノ・ソプラノ
フィガロ何でも屋バリトン
ドン・バジリオ音楽教師バス
ベルタバルトロ家の女中メゾソプラノ
フィオレッロ伯爵の従者テノール
アンブロージョバルトロ家の召使バス

作曲ロッシーニ・初演・原作・台本・上演時間

  • 題名 Il Barbiere di Siviglia セビリアの理髪師
  • 作曲 ジョアッキーノ・ロッシーニ
  • 初演 1816年2月20日 ローマ テアトロ・アルジェンティーナ
  • 原作 ピエール・オーギュスタン・カロン・ド・ボーマルシェの同名の戯曲
  • 台本 チェザーレ・ステルビーニ
  • 言語 イタリア語
  • 上演時間 2時間45分(第1幕95分 第2幕70分)

主役は、アルマヴィーヴァ伯爵

セビリアの理髪師 = フィガロ のことなのですが、オペラの主役がフィガロだと思ってみると、物語の理解へ遠回りになります。

ロッシーニが最初につけたタイトルは、「Almaviva o sia L’inutile precauzione アルマヴィーヴァ、あるいは無駄な用心」です。ロッシーニよりも前に、パイジエッロが「セビリアの理髪師」でオペラを発表していたので、配慮して別のタイトルをつけたのです。

ロッシーニが「主役は、アルマヴィーヴァ伯爵である」と想定して作品を作っているので、私たち見る側もそのように思って見るとよいでしょう。

「セビリアの理髪師」序曲

「セビリアの理髪師」の序曲は、ロッシーニの序曲の中でも有名なもののひとつです。

実は、ロッシーニの別作品「イングランドの女王エリザベッタ」の序曲からの転用です。楽曲が繰り返され、音量が大きくなっていく「ロッシーニ・クレッシェンド」が観客をわくわくさせてくれます。

「セビリアの理髪師」第1幕

第1場

セビリアの街角の広場

夜明け前の、ロジーナの部屋の窓辺。従者や楽団たちが、歌の準備中。

伯爵の従者
静かに、静かに。楽団たちよ、ついてきて。

「静かに、静かに」Piano, pianissimo

楽団ら
ついてきておりますよ。

伯爵の従者
伯爵様、準備は整いました。

楽団が演奏開始。伯爵が現れ、窓に向かって歌う。

アルマヴィーヴァ伯爵

ご覧なさい。美しい夜明けが現れましたよ。それなのに、あなたはまだ起きてこないの?どうして眠っていられるの?起きてくれ、私の甘い希望。

「ご覧、空が白み」Ecco, ridente in cielo

伯爵の従者
お嬢さんは窓に顔を見せませんね。

アルマヴィーヴァ伯爵

歌も音楽も役に立たないな。さあ、みんなに礼だ。

伯爵が楽団たちにお礼の金を渡すと、あたりは大騒ぎに。

楽団ら
ありがとう、旦那様。ご厚意と名誉、親切に、感謝だ。あなたはとても立派な人だ。ありがとう。

「ありがとう、旦那様」Mille grazie … mio signore

アルマヴィーヴァ伯爵

わかったから、静かにしろ。去ってくれ。従者、お前もしばらく去ってくれ。

楽団は去り、従者も物陰に控える。そこに、通りかかるのが、理髪師兼なんでも屋のフィガロ。

フィガロ

私は町のなんでも屋。町の皆さんが私を呼んでいる!

「私は町のなんでも屋」Largo al factotum

歌詞と対訳

「私は町のなんでも屋」Largo al factotum|セビリアの理髪師

何度も聞きたくなる、愉快な「フィガロの自己紹介」の歌。

アルマヴィーヴァ伯爵

あいつはフィガロじゃないか!

フィガロ

旦那様!伯爵様!

アルマヴィーヴァ伯爵

静かに。ここでは身分を知られたくないのだ。

フィガロ

どうぞご自由に。それで、なぜセビリアにおいでに?

アルマヴィーヴァ伯爵

プラドで美しい娘を見初めたんだが、彼女は引っ越した。それで私はセビリアまで追いかけてきたんだ。その家に住む医者の娘だよ。だが、彼女に近づけないんだ。

フィガロ

あなたは幸運ですよ。私は医者の家に出入りしているのです。床屋や何でも屋として。おや、バルコニーが開くぞ。

窓が開いて、ロジーナが現れる。

アルマヴィーヴァ伯爵

私の女神よ、やっと会えた。

ロジーナ

なんとか彼に手紙を渡せないかしら。

続いて、ロジーナのいる窓辺に、ロジーナの後見人バルトロが現れる。伯爵とフィガロは隠れる。

バルトロ

その紙はなんだ?

ロジーナ

歌詞ですよ。「無駄な用心」というアリアの。ああ、紙を落としてしまったわ。下に降りて拾ってきてください。

ロッシーニが最初につけたタイトルは、「Almaviva o sia L’inutile precauzione アルマヴィーヴァ、あるいは無駄な用心です。当時の観客は、ここで笑ったんじゃないかな。

バルトロが移動している隙に、伯爵が紙を拾う。屋敷の外に出てきたバルトロ。

バルトロ

どこにもないぞ。もういい、お前は部屋の中に入れ。

ロジーナは部屋に入り、バルトロも家に戻る。

アルマヴィーヴァ伯爵

なんて気の毒な娘だ。フィガロ、お前が彼女の手紙を読め。

フィガロ

「あなたの私への好意に関心があります。私の後見人はこれから出かけるところです。あなたの名前と身分をお知らせください。もはや窓辺に出ることもままなりません。この状況から脱するためにあらゆることをするつもりです。 不幸なロジーナ」

アルマヴィーヴァ伯爵

あの後見人は一体何者なんだ。

フィガロ

欲深い老人で、ロジーナの遺産をもらうために、彼女との結婚を狙っているのです。扉が開くぞ。

バルトロが出てきて、家を出ていく。

アルマヴィーヴァ伯爵

彼女の願いを叶えよう。ただ、伯爵の身分を知られたくない。彼女には、ありのままの私を愛してほしい。

フィガロ

ご自分で歌でお伝えください。私がギターを演奏するので、さあどうぞ。

伯爵が窓辺に、中にいるロジーナに向かって呼びかける。

アルマヴィーヴァ伯爵

もし私の名前を知りたければ、教えましょう。私の名前は、リンドーロ。お金はありませんが、あなたに心を捧げます。

「もし私の名前を知りたければ」Se il mio nome saper voi bramate

ロジーナ

(ロジーナの声)ロジーナは、リンドーロに心を…

部屋の中からロジーナの声が聞こえてくるが、途中で終わる。

アルマヴィーヴァ伯爵

どんなことをしても、彼女に会いたい!フィガロ、私を今日中にあの家に入れてくれ。褒美に金貨をたくさんやるぞ。

フィガロ

金貨には不思議で万能な効果がある。頭の中にアイデアが湧き出てくるぞ。

「二重唱」All’idea di quel metallo

アルマヴィーヴァ伯爵

金貨の効果を教えてくれ。

フィガロ

兵士に変装するのです。連隊の宿泊命令書を利用しましょう。

アルマヴィーヴァ伯爵

連隊には私の友人がいるから、なんとかなるな。

フィガロ

そうだ。酒に酔ったふりの兵士になってください。酒に酔ったふりをすれば、あの医者をだましやすいでしょう。

アルマヴィーヴァ伯爵

よいアイデアだ。そういえば、お前の店はどこだ?お前に会うには店の場所を知らないと。

フィガロ

左側の15番目で、階段は四段、ショーウィンドウには5つのかつら。そこで、私を見つけられますよ。

フィガロがバルトロ宅の中に入り、伯爵は準備のために立ち去る。

第2場

バルトロ家の一室

ロジーナは、学生リンドーロ(伯爵)への手紙を書いている。

ロジーナ

リンドーロとの恋をつかんでみせる!絶対に勝利するのよ!私は、素直で従順な娘。本当におしとやかなのよ。でも、私の弱みに触れたら、へびになってやる。やられる前に、罠を仕掛けてやり返す!

「今の歌声は」Una voce poco fa

歌詞と対訳

「今の歌声は」Una voce poco fa|セビリアの理髪師

愛を勝ち取ると決めた、ロジーナのタフな心を歌うアリア。

ロジーナ

リンドーロは、フィガロと一緒にいたわ。フィガロはいい人だし、私たちの恋を取り持ってくれるかも。

フィガロはこっそりバルトロ宅の中に入る。

フィガロ

ロジーナお嬢さん。少しお話したいことが。

ロジーナ

ええ、私もよ。でも、バルトロがいるわ。足音がするもの。

フィガロは物陰に隠れる。バルトロが現れる。

バルトロ

フィガロのやつ。いまいましい。

ロジーナ

フィガロは感じがいい人ですよ。(怒りで爆発しそう。この老人め。)

ロジーナが部屋を出ていく。

バルトロ

ロジーナは私を嫌っている。きっとフィガロのせいだ。

バルトロに味方する音楽教師が訪ねてくる。

音楽教師(バジリオ)
あなたに警告を持ってきましたぞ。アルマヴィーヴァ伯爵がこの町にいるそうです。ロジーナの秘密の恋人のようですよ。

バルトロ

何とかしないと。

音楽教師(バジリオ)
陰口をばらまいて、アルマヴィーヴァ伯爵を町から追いだそう!

陰口はそよ風のように、ささやかなものから始まります。ですが、次第に大きくなり、嵐のように威力が出るのです。

「陰口はそよ風のように」La calunnia è un venticello

歌詞と対訳

「陰口はそよ風のように」La calunnia è un venticello|セビリアの理髪師

歌の中に音楽用語が入った、ロッシーニのユーモアを感じる歌。

バルトロ

悠長なことを言ってられるか。それよりも、すぐにロジーナと結婚してしまおう。

バルトロと音楽教師は出ていく。立ち聞きしていた、フィガロ。

フィガロ

全部聞いたぞ。ロジーナお嬢さんとバルトロが結婚なんて、とんでもない。

フィガロはすぐにロジーナに会いに行く。

フィガロ

大変です。後見人があなたとの結婚を決意していました。

ロジーナ

なんですって!とんでもない勘違い男だわ。先ほど私の窓の下で若い男と話していたわね。

フィガロ

私のいとこです。真面目でいい男で、今恋に落ちているのです。

ロジーナ

まあ、どんな女性なの?名前は?

フィガロ

綺麗な人ですよ。その名前は、ロ、ロ、ロジーナです。

ロジーナ

それでは、私が幸運な娘なのね!(って私のことだと思っていたわよ。)

「二重唱」Dunque io son

フィガロ

リンドーロが好きなのはあなたですよ。(抜け目のない女の子だ。)

ロジーナ

リンドーロと話したいんだけど。

フィガロ

もうすぐあなたに会いに来ますよ。何か彼に手紙を書いてくださいよ。

ロジーナ

そんな恥ずかしいことできません。…とか言いつつ、ほら、手紙なら、ここにあるわ。

フィガロ

すでに書いていたとは!俺は間抜けだな。彼女にラブレターの書き方を教えようだなんて。

手紙を受け取り、フィガロは帰る。バルトロがロジーナを訪ねてやってくる。

バルトロ

今日、フィガロと何を話したんだ?

ロジーナ

とりとめのない話ですよ。

バルトロ

お前の指がインクで汚れている理由は?紙が一枚足りないぞ。ペン先が尖っているのはなぜだ?

ロジーナ

インクはやけどの手当てにつけたのよ。紙は、女中にお菓子をあげるために使ったの。ペンは刺繍の下書きのためよ。

バルトロ

私のような医者を向かって、そんな言い訳をするのか!お前を部屋に閉じ込めてやるからな!

「私のような医者に向かって」A un dottor della mia sorte

バルトロはロジーナを散々脅して、部屋を出て行く。

ロジーナ

笑っちゃうわ。好きなだけ文句を言って、扉を閉めればいいわ。

ロジーナも、その場を離れる。バルトロ宅に騒々しく、酔っ払い兵士がやってくる。酔っ払った兵士のふりをした、伯爵の変装

アルマヴィーヴァ伯爵

おい、誰かいないか?

バルトロ

酔っ払いが何の用だ?

わざと、バルトロの名前を何度も呼び間違えて、からかう。

アルマヴィーヴァ伯爵

あなたが、ドクター・バロルド(ばか)?じゃあ、ドクター・ベルトルド(まぬけ)?わかった!ドクター・バルバロ(野蛮人)?

バルトロ

違う!ドクター・バルトロだ!!お前は誰だ?

アルマヴィーヴァ伯爵

私は連隊の兵士だ。宿泊許可証もあるぞ。(愛しい人よ、出てきておくれ。)

騒動を聞きつけて、ロジーナが現れる。

アルマヴィーヴァ伯爵

(小声で)私はリンドーロです。

ロジーナ

(小声で)気をつけてください。

バルトロ

ロジーナは部屋に戻れ。

伯爵は、ロジーナにこっそり返事の手紙を渡す。

バルトロ

酔っ払いは出ていけ。

アルマヴィーヴァ伯爵

それなら受けて立つ。

家の外にまで声が響く位の騒動なので、フィガロと音楽教師がびっくりして駆けつける。

フィガロ

一体何の騒ぎだ!通りに人が集まっていますよ。

さらに、騒動を聞きつけた兵士たちがやってくる。

兵士ら
何の騒ぎだ。説明しろ。

バルトロ

兵士の若造が問題を起こした。

「六重唱」Questa bestia di soldato

アルマヴィーヴァ伯爵

宿泊許可証があるのに、私を宿泊させてくれない。

バルトロ

この兵士が私をひどいめに合わせたんです。

兵士
わかった。お前は逮捕だ。

アルマヴィーヴァ伯爵

まあ、待て。これを見ろ。

兵士たちは伯爵の渡す紙を見て恐縮する。伯爵は何も知らないふりをして、バルトロたちと同じように振る舞う。

バルトロ

冷たく動かない、まるで彫刻のように。

「六重唱」Fredda ed immobile

アルマヴィーヴァ伯爵

凍り付いて動けない。

フィガロ

アハハ。バルトロは彫刻だ。

バルトロ

(兵士に)でも、あなたがた…あの、私は…

兵士ら
何も言うな。黙ってろ!騒動はおしまいだ。

全員
まるで鍛冶屋の中にいるみたい。金槌の音がうるさくて、頭がパンクしそう。何も考えられず、混乱するばかり。

「まるで鍛冶屋の中に」Mi par d’essere con la testa

「セビリアの理髪師」第2幕

バルトロ家の居間

バルトロが、居間でくつろいでいると、音楽教師に変装した、伯爵がやってくる。

アルマヴィーヴァ伯爵

喜びと平和を!平和と喜びを!(一回目の変装はばれたが、次はうまくいく!)

「二重唱」Pace e gioia sia con voi

バルトロ

どうも、どうも。(この男に見覚えがあるような。思い出せない。)ところで、どなた?

アルマヴィーヴァ伯爵

病気の音楽教師の代理で来ました。私は弟子です。

バルトロ

(なんか怪しいな。)それでは、見舞いに行こう。

アルマヴィーヴァ伯爵

ちょっと、お待ちを。実は私は、アルマヴィーヴァ伯爵と同じ宿に泊まっています。偶然私はこの手紙を手に入れたのです。

バルトロ

これはロジーナの筆跡。

アルマヴィーヴァ伯爵

この手紙を「伯爵がロジーナをもてあそんでいる証拠」として、彼女にみせたらどうでしょう。

バルトロ

お前はやり手だな。

バルトロが、その手紙を懐にしまう。偽の音楽教師(伯爵)を信用する。バルトロはロジーナを呼びに行く。

アルマヴィーヴァ伯爵

ロジーナからの手紙を、バルトロに渡してしまったが仕方がない。あのままでは追い出されてしまった。後で彼女に説明しよう。

バルトロがロジーナを連れてくる。

バルトロ

ロジーナ、来なさい。代理でこの音楽教師が来てくれたぞ。

ロジーナ

あら!(リンドーロだわ。)それでは「無駄な用心」を歌いましょう。

バルトロ

お前はいつも「無駄な用心」だな。

偽の音楽教師(伯爵)と、ロジーナの音楽レッスンが始まる。それを聴いている、バルトロ。

ロジーナ

愛は、真実にして不屈な情熱です。権力でも、打ち砕くことはできません。愛は勝利するのです。リンドーロ、大切な人。私を救ってください。

「真実にして不屈の情熱」Contro un cor che accende amore

バルトロは途中で眠ってしまう。

アルマヴィーヴァ伯爵

心配するな。私を信じなさい。

バルトロ、目覚める。

バルトロ

ロジーナは美しい声だな。だが、このアリアは退屈だ。私が手本をみせてやろう。「お前が側にいると、ロジーナ。私の心の中で、踊る。メヌエットを踊る。」

「お前が側にいると」Quando mi sei vicina

フィガロがやってきて、歌ってるバルトロに併せて踊る。

バルトロ

フィガロ、踊りがうまいな。それで、何の用だ?

フィガロ

あなたの髭剃りに来ました。明日から連隊の士官たちや、ご婦人方のかつらなどの仕事があるのでね。

バルトロ

今日は髭を剃りたくない。

フィガロ

私は腕がいいのです。お客がたくさん待っています。今日剃らないなら、別の者に頼んでください。

バルトロ

仕方がないな。

ひげ剃りにはタオルが必要。タオルを置いてあるのは、鍵のかかった部屋。

バルトロ

タオルを取ってこい。いや、やっぱり自分で行く。

フィガロに鍵の束を渡そうとするが、渡さずに自分でタオルを取りに行く。

フィガロ

あの鍵の束にあなたを閉じ込める鍵があるのですか?

ロジーナ

一番新しい鍵です。

タオルを取りに行くが、切れ者のフィガロをロジーナのいる部屋に残すのが不安になって戻ってくる。

バルトロ

やっぱり、お前がタオルを取りに行け。部屋で何も触るなよ。

フィガロに鍵の束を渡す。

フィガロ

何もしませんよ。すぐに戻ります。(鍵の束をゲットしたぞ。)

フィガロ、鍵の束を持って出ていく。

バルトロ

あの男なんですよ。伯爵にロジーナの手紙を渡したのは。

アルマヴィーヴァ伯爵

ペテン師に見えますね。

部屋の外から、大きな物音。バルトロが部屋を出ていく。

アルマヴィーヴァ伯爵

やっと二人きりになりました。

ロジーナ

他に何も望みません。

バルトロとフィガロが戻る。フィガロは、鍵の束から抜き取った、新しい鍵を伯爵にこっそり見せる。

フィガロ

よくやったでしょ。この鍵を見て!

フィガロがひげ剃りを始める。伯爵が病気だと嘘をついた、音楽教師がやってきた。

ロジーナ

ドン・バジリオ!

「五重唱」Don Basilio!

アルマヴィーヴァ伯爵

(バルトロに)彼は計画を何も知らないので、追い払いましょう。

バルトロ

バジリオ、体調はいかが?

音楽教師(バジリオ)
体調?

アルマヴィーヴァ伯爵

熱があるようですよ。大変だ。

音楽教師(バジリオ)
熱ですって?

フィガロ

体調が悪そうだ。

アルマヴィーヴァ伯爵

さあ行って。体を大切にしなさい。

アルマヴィーヴァ伯爵は音楽教師に財布を渡す。

ロジーナ

さあ、行ってちょうだい。

音楽教師(バジリオ)
何度も言わないでいいですよ。(なぜ財布が?バルトロは罠にはまったな。)わかりました。行きますよ。

音楽教師に帰ってもらう。フィガロがバルトロのひげ剃りを再開。伯爵とロジーナは、こっそり話している。

アルマヴィーヴァ伯爵

(小声)真夜中、私とフィガロであなたに会いに来ます。鍵を手に入れました。何も心配はいりません。

ロジーナ

(小声)あなたをお待ちします。

アルマヴィーヴァ伯爵

(小声)あなたの手紙を、私の変装が…

バルトロ

変装だって?!

バルトロが激怒。みんな追い出される。

バルトロ

なんて不幸なんだ。音楽教師のバジリオは何か気が付いているかも。あいつを呼びに行かせよう。

バルトロ出ていく。バルトロ家の女中がひとりになって、騒動をぼやく。

女中
爺さんが妻を求め、娘は夫を求める。恋はみんなを狂わせる。私は老いて、誰にも必要とされないのに。

「爺さんが妻を求め」Il vecchiotto cerca moglie

バルトロが使いをやって呼んだので、音楽教師が来る。

音楽教師(バジリオ)
私はあの若者の音楽教師を知りませんよ。

バルトロ

それならば、伯爵があの偽物の音楽教師をよこしたのだ。

音楽教師(バジリオ)
いいえ、あの男が伯爵ですよ。ほら、彼に渡された財布に紋章が付いています。

バルトロ

こうなったら、今夜中にロジーナと結婚してやる。公証人が必要だ。お前が公証人を呼びに行ってくれ。

バルトロは、音楽教師に結婚のための公証人を呼びに行かせる。

バルトロ

ロジーナと絶対結婚してやる。そうだ、この手紙を利用すれば!

バルトロは、ロジーナに、偽の音楽教師(伯爵)からもらった、ロジーナの手紙を見せる。

バルトロ

この手紙を見ろ。お前の手紙だろう。フィガロとあの音楽教師は、伯爵にお前を売ろうとしているのだよ。

ロジーナ

なぜ私の手紙が!(リンドーロが私をだましたのね。)いいわ、あなたと結婚するわ。でも、真夜中に、卑劣な男とフィガロが一緒にここに来ます。彼らは、扉を開ける鍵を持っています。

バルトロ

それなら、私は警察を呼びに行く。

バルトロが出ていく。

外は、嵐になる。嵐の音楽

約束の真夜中。バルトロから盗んだ鍵で、扉を開け、伯爵とフィガロが忍び込む。

ロジーナ

不誠実な男!帰って。信じた私がバカだった!私を伯爵に売るつもりなのね。リンドーロ、あなたを愛していたのに。

アルマヴィーヴァ伯爵

私の名前はリンドーロではなく、アルマヴィーヴァ伯爵だ。

ロジーナ

なんて意外な展開でしょう。

アルマヴィーヴァ伯爵

なんという思いがけない勝利だ。

フィガロ

大変だ。誰かやってくる。

音楽教師と公証人がやってくる。

フィガロ

バジリオと私が予約した公証人がいるぞ。これならうまくやれそうだ。

(公証人に)あなたは、アルマヴィーヴァ伯爵と私の姪との結婚契約書を結ぶ予定でしたよね。書類はお持ちで?

公証人が書類を見せる。

音楽教師(バジリオ)
ドン・バルトロはどちらに?

アルマヴィーヴァ伯爵

お前にこの指輪をやろう。反対すれば、私には銃があるぞ。

音楽教師(バジリオ)
指輪をいただきます。

アルマヴィーヴァ伯爵

結婚の証人は、フィガロとドン・バジリオだ。

伯爵とロジーナが署名。バルトロが、警官や兵士たちを連れて家に帰ってくる。

バルトロ

彼らは泥棒です。捕まえてください。

法務官
あなたの名前は?

アルマヴィーヴァ伯爵

私はロジーナの夫であり、アルマヴィーヴァ伯爵だ。

バルトロ

でも、私は…

アルマヴィーヴァ伯爵

もう逆らうのをやめろ。

バルトロ

要するに、私の負けか。だが、お前が裏切るとは。

音楽教師(バジリオ)
伯爵は、私を黙らせる術をお持ちで。

バルトロ

持参金はないぞ。

アルマヴィーヴァ伯爵

持参金はいらない。お前にやろう。

フィガロ

バルトロ、俺はあんたの笑顔を見たよ。さあ、二人を祝福だ。この素晴らしく幸せな結びつきを心に留めておきましょう。

「この素晴らしく幸せな結びつきを」Di sì felice innesto

ロジーナ

ため息と苦しみの引き換えに、幸福な瞬間を得たのね。

アルマヴィーヴァ伯爵

リンドーロの情熱があなたに受け入れられたのだ。より美しい運命があなたに待っているでしょう。

合唱
愛と永遠の誓いが二人の中で続きますように。

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