フィデリオ|あらすじと簡単解説・ベートーヴェン

「フィデリオ」は、ベートーヴェン、唯一のオペラ作品です。1805年に初演が失敗に終わり、何度か改訂して、1814年に現行の決定版が完成しました。

オペラの主役は、刑務所に幽閉された夫を救い出すために、男装して働くレオノーレ(男装しているときの名前はフィデリオ)です。

「フィデリオ」の見どころ、聴きどころとしては、「悪人よ、どこへ行くのか」Abscheulicher! Wo eilst du hin?、「神よ、ここは何という暗さだ」Gott! Welch Dunkel hier! があります。

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オペラ・歌劇「フィデリオ」の簡単なあらすじ

舞台は、スペイン、セビリャ近郊の国営刑務所。

監獄にいる夫を探すため、男装して働く妻、レオノーレ(フィデリオ)

真面目に働いたため、看守長のロッコと娘に気に入られる。娘婿に、という話まである。ロッコから信頼を勝ち取り、地下牢に入り、夫のフロレスタンを発見。夫を監獄に入れた刑務所長と妻のレオノーレが対峙するが、刑務所を視察に来た大臣が到着。

大臣が刑務所長を逮捕し、夫を自由の身にする。民衆が、レオノーレの行動を褒め称えて終わり。

相関図と登場人物(レオノーレ・フロレスタン)

フィデリオの相関図
オペラ「フィデリオ」の相関図・タップで拡大表示
レオノーレ(フィデリオ)フロレスタンの妻ソプラノ
フロレスタン囚人テノール
ドン・ピツァロ国営刑務所の所長バリトン
ロッコ看守長バス
マルツェリーネロッコの娘ソプラノ
ヤキーノ門番テノール
ドン・フェルナンド司法大臣バリトン

作曲ベートーヴェン・初演・原作・台本・上演時間

フィデリオ Fidelio

  • 作曲 ベートーヴェン
  • 初演 1805年11月20日 アン・デア・ウィーン劇場
  • 原作 ジャン・ニコラス・ブイイ「レオノーレ、または夫婦愛」
  • 台本 ヨゼフ・ゾンライトナー(初版) ゲオルク・フリートリヒ・トライチュケ(改訂) ドイツ語
  • 上演時間 2時間10分(第1幕70分 第2幕60分)

ベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」はつまらない?!

「なぜ、ベートーヴェンが貧乏だったのか?」がよくわかるオペラです。貧乏というより、オペラの作曲で大金を得ることが出来なかった、の方が正しいかもしれません。

当時、作曲家が一番稼げるのが、オペラでした。ベートーヴェンと生きていた時代が重なったロッシーニは、オペラで大成功し大金持ちになっています。モーツァルトも「フィガロの結婚」で大金を稼いでいます。作曲家が目指す「山」それがオペラでした。

【理由】なぜ、フィデリオはつまらないと感じるのか?

つまらない理由は「フィデリオが器楽的に書かれたオペラ」だから。

フィデリオは「声楽的というより、器楽的に書かれたオペラ」と言われています。

声楽的でない → オペラ歌手が歌いにくい (歌うことを考慮していない曲)

オペラ歌手が歌いにくいってことは、観客側も聞きにくく楽しみにくいのです。

確かにフィデリオは、他のオペラとはちょっと違います。そもそも、オペラの魅力は歌詞(登場人物の感情)と音楽の一体感により、観客が登場人物に感情移入するところにあります。

オペラ(芝居+音楽)の魅力 = 歌詞(登場人物の感情)+ 音楽 の一体感

ベートーヴェンがオペラを器楽的に作曲したことにより、登場人物の感情と音楽の一体感が感じにくく、結果、フィデリオがつまらない、となるのだと思います。このようにベートーヴェンはオペラを苦手としていたので、金銭面で苦労したのです。

「フィデリオ」第1幕の簡単な対訳 夫を探すため男装

序曲

スペイン政治犯・監獄の中庭

看守長ロッコの娘、マルツェリーネは、洗濯中。看守の男に言い寄られるが、相手にしない。

看守の男(ヤキーノ)
可愛い人、これで二人きりだ。

「二重唱・これで二人きりだ」Jetzt, Schätzchen, jetzt sind wir allein

マルツェリーネ
あんたの愛にうんざりなのよ。私にとってどれだけ時間が長く感じられることか。哀れな人が苦悩していることはわかっている。でも、私はフィデリオを選んだの。

その男が去ると、マルツェリーネはひとりで、自分の恋心を歌う。

マルツェリーネ
気の毒だとは思うけれど、仕方がない。私はフィデリオに決めたの。

「もしあなたと結ばれたら」O wär ich schon mit dir vereint

彼女の所に、父の看守長ロッコと、先ほど口説いていた男が来る。

ロッコ

牢番・ロッコ
フィデリオはまだか?刑務所長に渡す書類を取りに行くように頼んだのだが。

フィデリオ(男装したレオノーレ)が帰ってくる。

 レオノーレ  (フィデリオ)

ロッコ親方。仕事が終わりました。

ロッコ

牢番・ロッコ
フィデリオ。お前の仕事ぶりは大したものだ。お前ほど、熱心で利口な者はいないよ。(きっと娘に気があるから、頑張っているんだな。よし、娘と結婚させよう。)お前の気持ちはわかっているぞ。

 レオノーレ  (フィデリオ)

いやいや、仕事ですから。

マルツェリーネ
(不思議な感情がわき出すわ。フィデリオは私を好きなのね。)

「四重唱・不思議でならないわ」Mir ist so wunderbar

 レオノーレ  (フィデリオ)

(困ったな。彼女は私に恋をしている。)

ロッコ

牢番・ロッコ
(娘はフィデリオが好きなんだな。認めてやろう。)

看守の男(ヤキーノ)
(ロッコ親方が認めたら、ふたりは結婚してしまう。)

フィデリオは「仕事ですから」と困惑し、マルツェリーネは喜び、彼女を口説いていた看守は、落胆して去る。

ロッコ

牢番・ロッコ
娘婿にしよう。夫婦に大切なのは、金だ。それがなきゃ始まらない。

「人間、金がなければ」Hat man nicht auch Gold beineben

 レオノーレ  (フィデリオ)

夫婦に必要なのは、心の結びつきです。でも、私が努力しても手に入れられないものがあります。それは、あなたの信頼です。秘密の地下牢の仕事は手伝わせてもらえていません。手伝いたいのに。

ロッコ

牢番・ロッコ
地下牢には私しか行けないのだ。他の者は行くことができない。

マルツェリーネ
お父さん、手伝ってもらったら。働き過ぎですもの。

 レオノーレ  (フィデリオ)

お嬢さんの言う通りです。自分の体をいたわるべきですよ。

マルツェリーネ
お父さんを大切に思う私たちのために、体をいたわらないと。

ロッコ

牢番・ロッコ
そうだな。お前たちの言う通りだ。私には荷が重いのだ。2年以上地下牢に入り、食事をあまり与えてもらえない男がいる。私には何もしてやることが出来ない。

 レオノーレ  (フィデリオ)

私の夫、フロレスタンかもしれない。)私には勇気も強さもありますので、ぜひ同行させてください。

ロッコ

牢番・ロッコ
いいぞ、息子よ、常に勇気を持つのだ。

「三重唱・よろしい息子よ」Gut, Söhnchen, gut

 レオノーレ  (フィデリオ)

勇気も強さもありますので、ぜひ同行させてください。

マルツェリーネ
地下牢に行けば、優しいあなたの心が痛んでしまうわ。でも、戻ってきたら、愛の幸せが待っているのね。

ロッコ

牢番・ロッコ
所長に書類を渡す時間だ。ふたりとも下がっていなさい。

マルツェリーネとフィデリオは去り、刑務所長がやって来る。ロッコから報告を受け、書類を受け取る。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
(書類に目を通しながら)「監獄に不法に監禁された者がいると密告があり、大臣が視察に来る

(地下牢につないだ、フロレスタンを見たら大変なことになるぞ。大臣が来る前に、あいつを始末してしまおう。そのためには、ロッコを味方にしなければ。)

今こそ、その機会だ。復讐を果たすために、運命の時が来た。あの男の最期には、こうささやくのだ。勝利だ。勝利は私のものだ。

「今こそチャンスだ」Ha, welch ein Augenblick!

衛兵たち
あの方は死と傷を語っているのか?何か重要なことが起こるのか?自分の持ち場をしっかりやろう。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
士官よ。街道を見張り、大臣が来たらラッパで合図しろ。さあ、行け。

さて老人よ。お金を渡そう。人殺しをしてくれ。

「二重唱・さて老人よ」Jetzt, Alter, jetzt hat es Eile!

ロッコ

牢番・ロッコ
なんと恐ろしい!人殺しは、私の仕事ではありません。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
仕方がない。お前は墓の穴を掘れ。私が殺しに行く。

ロッコと刑務所長は、去る。立ち聞きしていた者がひとり、フィデリオだ。

 レオノーレ  (フィデリオ)

悪人よ、急いでどこに行くのか。希望よ、来たれ。最後の星を消さず、私の目標を照らしてくれ。

「悪人よ、どこへ行くのか」Abscheulicher! Wo eilst du hin?

フィデリオは、必ず夫を助けると決意し、立ち去る。

庭に、マルツェリーネ、看守長ロッコ、フィデリオ。

 レオノーレ  (フィデリオ)

ロッコ親方。良い天気ですし、気の毒な囚人たちを庭に出してあげましょうよ。所長もしばらくは来ないでしょう。

ロッコは、最初は「所長の許しがないと無理だ」と言うが、娘のマルツェリーネが熱心に頼むので、規則を破ることにする。刑務所長が庭に来ないように、ロッコは刑務所長に会いに出かける。

監房を開けると、囚人たちが出てくる。それを見た、士官が報告行く姿がある。フィデリオは、囚人たちの中に夫がいないか探すが夫は見つからない。

囚人たち
なんという嬉しさ、大空の下で息をできることが喜ばしい。地下牢はつらい。自由の中で、呼吸するのだ。

「囚人たちの合唱・なんて嬉しいことか」O welche Lust

刑務所長と話したロッコが戻り、フィデリオと話す。

 レオノーレ  (フィデリオ)

ロッコ親方。刑務所長の返事はどうでしたか?

ロッコ

牢番・ロッコ
お前たちの結婚も、地下牢にお前が行くことも許可された。

 レオノーレ  (フィデリオ)

今日にもですか!なんと嬉しい。

「二重唱・今日にもですか」Noch heute! Noch heute!

ロッコ

牢番・ロッコ
落ち着きなさい。厳しい仕事をしなければならない。地下牢に、墓の穴を掘るのだ。

二人が話しているところに、マルツェリーネが急いでやって来る。

マルツェリーネ
大変よ。お父さん、急いで!牢から主人たちを出したのを刑務所長が知ってしまったわ。所長は暴君のように怒るでしょう。

「四重唱・お父さん急いで」Ach, Vater, Vater, eilt!

ロッコ

牢番・ロッコ
囚人を急いで牢に戻すんだ。

看守の男(ヤキーノ)
急ぎましょう。

 レオノーレ  (フィデリオ)

私の中にも怒りが満ちている。

刑務所長が怒って現れる。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
勝手なことを。囚人に自由を与えるとは。

「五重唱・勝手なことを」Verwegner Alter!

ロッコ

牢番・ロッコ
地下牢の不運な男は死ぬのですから、他の囚人に少しの散歩をお与えください。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
早く仕事に取りかかれ。

「フィデリオ」第2幕の簡単な対訳 地下牢にいた夫との再会

第1場 地下牢に幽閉された夫と再会

地下牢

フロレスタンが、体に鎖を巻き付けられ、石の上に座っている。

フロレスタン

なんと暗く、不気味な所だろう。生きているものは、自分以外にいない。一人の天使が見えるぞ。妻のレオノーレに似ているではないか。私を天国に導いてくれるだろう。

「神よ、ここは何という暗さだ」Gott! Welch Dunkel hier!

ロッコとフィデリオが地下牢に降りてくる。

 レオノーレ  (フィデリオ)

この地下牢はなんと寒いのか。

「この地下牢はなんと冷えるのか」Wie kalt ist es in diesem unterirdischen Gewölbe!

ロッコ

牢番・ロッコ
のんびりしていられない。さあ、掘るぞ。あっという間に、刑務所長はやってくるだろう。

「二重唱・墓堀の場」Nur hurtig fort, nur frisch gegraben

 レオノーレ  (フィデリオ)

文句を言う必要はないですよ。しっかりやります。

フロレスタンは倒れ込んでいて、動かない。

 レオノーレ  (フィデリオ)

(夫だろうか。もしこの人が夫なら、神様お助けください。)

二人は、墓穴を掘り始める。フロレスタンが目覚めて、声を掛けてくる。

フロレスタン

看守よ。最後に刑務所長の名前を教えてくれ。

 レオノーレ  (フィデリオ)

(私の夫だわ!)

ロッコ

牢番・ロッコ
(もう言っても問題ないだろう。)所長は、ドン・ピツァロだ。

フロレスタン

ピツァロ!!妻に連絡を取りたい。そして少しの水をくれないか。

ロッコ

牢番・ロッコ
連絡をするのは出来ない。水はないが、手持ちのブドウ酒ならあげられる。フィデリオ、もってこい。彼に与えるのだ。彼はもうすぐ私の娘婿になる。

 レオノーレ  (フィデリオ)

お持ちします。誰がそうせずにいられます? あなただってそうでしょう。ロッコ親方。

フロレスタン

あなた方がより良い世界で報われるように。

「三重唱・あなた方がより良い世界で報われるように」Euch werde Lohn in bessern Welten

フィデリオは、ロッコに許可をもらい、自分のパンをフロレスタンに与える。フロレスタンは、妻に気がつかない。

墓穴の用意ができた。ロッコが口笛を吹き合図を送ると、刑務所長が降りてくる。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
その若者を遠くにやれ。

ロッコ

牢番・ロッコ
さあ、出ていくんだ。

フィデリオは、去るふりをして隠れる。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
奴は死ぬのだ。

「四重唱・奴は死ぬのだ」Er sterbe!

フロレスタン

殺人者は目の前にいるのか。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
今日中に始末しなければいけない。さあ、俺の顔を見ろ。お前が倒そうとしたピツァロだ。(短刀を抜き)この剣を…

フィデリオは、叫び声を上げて刑務所長に突進し、フロレスタンを守る。

 レオノーレ  (フィデリオ)

さがれ。まず、その人の妻である、私を殺せ。

ロッコ

牢番・ロッコ
何事だ。

刑務所長、ロッコ、フロレスタン、全員が驚く。レオノーレは、ピストルを取り出し、刑務所長に向ける。大臣の到着を知らせるラッパの音が響く。

刑務所長(ドン・ピツァロ)
大臣が来てしまったのか。

 レオノーレ  (フィデリオ)

レオノーレとフロレスタン
復讐の時が来た。

「復讐の時が来た」Es schlägt der Rache Stunde

刑務所長(ドン・ピツァロ)
忌々しい。

ロッコ

牢番・ロッコ
恐ろしい時間だ。神よ、何が起こったのか。

ピツァロは、いまいましそうに階段を上っていき、ロッコはレオノーレに目配せして上がっていく。レオノーレとフロレスタンは、再会を喜び、神を称える。

 レオノーレ  (フィデリオ)

限りにない喜び。私の胸に夫がいる。

「二重唱・限りない喜び」O namenlose Freude!

フロレスタン

限りにない喜び。レオノーレの胸にいる。

序曲「レオノーレ」第3番

グスラフ・マーラーが、フィデリオを指揮した際に、間奏曲として演奏して以来、ここに挿入されることが増えました。ベートーヴェンが、意図して入れたわけではありません。賛否あり。

第2場 悪人は逮捕、男装して夫を探した妻を賞賛

監獄の中庭

民衆たちが集まっている。

囚人たちと人々
万歳!この日、この時。この墓場の門に、長い間憧れていた慈悲と正しさが現れたのだ。

「合唱」Heil sei dem Tag, Heil sei der Stunde

大臣と刑務所長、兵たちが民衆の前に現れる。大臣の前に、囚人たちが連れられてくる。

大臣(ドン・フェルナンド)
国王の命で、不正を暴くためにやってきた。

ロッコが、レオノーレとフロレスタンを引き連れてやってくる。刑務所長は、怒って下がれと命令する。

ロッコ

牢番・ロッコ
こちらの二人に、心を寄せてください。彼はドン・フロレスタンです。

大臣(ドン・フェルナンド)
死んだと思っていた。懐かしい友よ。

ロッコ

牢番・ロッコ
そして、こちらが彼の妻です。夫を救うために、男装して私のもとに働きに来ました。刑務所長が、フロレスタンを亡き者にしようとしたところ、あなたが到着したので助かりました。

大臣(ドン・フェルナンド)
友人の鎖を解かなければ。いや、その役目はこの女性がふさわしい。

ロッコに事情を聞き、大臣はレオノーレの行動を賞賛する。マルツェリーネは、事実を知り、驚き悲しむ。大臣は、刑務所長の逮捕を命じ、レオノーレに夫の鎖を解くよう鍵を渡す。

 レオノーレ  (フィデリオ)

神よ、なんという瞬間。

フロレスタン

言葉にならないほど甘い幸せ。

囚人たちと人々
気高い妻をもつ者に、称賛を贈ろう。夫の救世主となった人を褒めても褒めすぎることはない。

「合唱」Wer ein holdes Weib errungen

全員が、レオノーレの勇気や行動を褒め称えて、幕。

実際に「フィデリオ」の舞台を観るには

2018年に新国立劇場で公演がありました。サイトで動画や解説が見られます。

【公式】新国立劇場オペラ「フィデリオ」の公演情報

「フィデリオ」のおすすめDVD

小学館の人気シリーズです。

DVD付きの解説本なので、気軽に観ることができます。

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