【魔笛】のあらすじ・モーツァルト

魔笛 モーツァルト

「魔笛」はモーツァルトが最後に完成させた、傑作オペラです。

多くの偉人に愛されたオペラで、ゲーテが「魔笛」の第2部を作ろうと挑戦(未完)、ベートーヴェンは「魔笛」をテーマに作曲、ワーグナーも「魔笛」を絶賛していました。

「魔笛」は一見おとぎ話のようでありながら、善悪の逆転、オペラに登場する意味ありげな「3」の数字と、興味を引かれる要素が多いオペラです。さて、王子様が誘拐された姫を救出に向かうところから話は始まります。

誘拐されたパミーナを救おうとする、王子タミーノ、お供のパパゲーノ、誘拐された娘・パミーナの3人に注目して見ると、魔笛を簡単に見ることができますよ。

有名な「夜の女王のアリア」は、次のところで出てきます。

  1. 夜の女王のアリア・・・第1幕・第1場
    「恐れずに、若者よ」O zitt’re nicht, mein lieber Sohn!

  2. 夜の女王のアリア・・・第2幕・第3場
    「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
    Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen
  • 初心者
    通好み
  • 音楽
    易しい
    難しい
  • 内容
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オペラ「魔笛」の簡単なあらすじ

第1幕

王子タミーノが夜の女王に頼まれて、ザラストロに誘拐されたパミーナを救いにいく。お供は、陽気なパパゲーノ。無事にパミーナを見つけて、タミーノとパミーナは恋に落ちる。

第2幕

タミーノはザラストロの世界で、英知とパミーナを得るために試練に挑戦することになる。パパゲーノも一緒に挑戦。パパゲーノの挑戦への褒美は、パパゲーナという娘。

娘を誘拐された被害者だったはずの夜の女王が、亡くした夫がザラストロに渡した「太陽の力」を取り戻すために、娘のパミーナにザラストロを殺すように命令。ザラストロはそのことを知り、復讐心ではなく愛の心で許そうと言う。

タミーノとパパゲーノは、無事に試練を乗り越える。ザラストロの世界を襲いに来た、夜の女王は光の力に破れる。人々が、美と英知による太陽の世界を褒め称える。

相関図と登場人物(タミーノ・パミーナ・パパゲーノ)

魔笛 相関図
タミーノある国の王子テノール
パミーナ夜の女王の娘ソプラノ
パパゲーノ鳥刺しバリトン

鳥刺し・・・鳥を捕獲する人

作曲モーツァルト・初演・原作・台本

魔笛 Die Zauberflöte

  • 作曲 モーツァルト
  • 初演 1791年9月 ウィーン アウフ・デア・ヴィーデン劇場
  • 原作 クリストフ・マルティン・ヴィーラント「ルル、または魔笛」
  • 台本 ヨハン・エマニエル・シカネ-ダー 他 ドイツ語

簡単に見るコツは「第1幕と第2幕で、善人と悪人が逆転」

魔笛 説明図

第1幕

  • 善・・・娘を誘拐された、夜の女王
  • 悪・・・誘拐した、ザラストロ

第2幕

  • 善・・・英知の世界へ導く、ザラストロ
  • 悪・・・娘にザラストロの殺害を命令・娘を男に差し出そうとする、夜の女王

第1幕 タミーノとパパゲーノ、誘拐された娘の救出に向かう

第1場 タミーノ、夜の女王に娘パミーナの救出を頼まれる。お供は、パパゲーノ

岩山

日本の狩衣を着た王子・タミーノ。蛇に追われて逃げ惑う。

タミーノ

助けてくれ!!もうダメだ!
(失神して倒れる)

女性三人が現れて、蛇を倒す。

3人の侍女(全員で)
私たちの力よ。彼を救ってあげたわ。

一人目
あら、よく見るとかっこいい。

二人目
本当に!女王様にお見せしよう。私がここに残るわ。

三人目
いえいえ、私が残ります。
・・・皆、残りたいのね。それなら彼はここにおいて、3人で女王様のもとに行きましょう。

3人の侍女が立ち去り、タミーノは目を覚ます。そばでは、蛇が死んでいる。

タミーノ

私は無事なのか?誰かがやって来るぞ、隠れよう。

パパゲーノ

鳥を捕まえるのが、俺の仕事!陽気で元気なんだ。可愛い女の子と結婚したいな。

「私は鳥刺し」Der Vogelfänger bin ich ja

隠れていたタミーノは出てきて、パパゲーノに声をかける。お互いに自己紹介。タミーノは「遠い国の王子様」、パパゲーノは「夜の女王と侍女たちに、捕まえた鳥を渡して食べ物の交換をしてもらい、暮らしている」と言う。

タミーノ

それで、この蛇を殺したのは君なのかい?

パパゲーノ

なんだって?!(うわ、蛇が死んでる。)ああ、そうだよ。素手で殺したんだ。俺は力持ちなんだぞ。

3人の侍女がその場に現れる。

3人の侍女

パパゲーノ!!

夜の女王様が、あなたにこれを下さったわ。ワインの代わりにお水を。砂糖の代わりに石を。イチジクの代わりに金の錠前を。

なんの罰かわかるわね。あなたが嘘をつくからよ。

パパゲーノは、口に金の錠前をつけられて、しゃべることができない。

3人の侍女

若者よ。あなたを助けたのは私たちですよ。

これは、夜の女王様の「娘パミーナの絵姿」です。あなたが絵姿に心を動かされれば、幸福と名誉を手に入れられるでしょう。

それでは私たちはしばし去ります。反省しなさい、パパゲーノ。

3人の侍女は去っていく。絵姿を見るタミーノ。

タミーノ

なんと美しい絵姿。心は火のように燃えている。これが恋なのか、そうだ、愛なのだ。

「なんと美しい絵姿」Dies Bildnis ist bezaubernd schön

ふたりの前に、戻ってきた3人の侍女。

3人の侍女

勇気を出して下さい。夜の女王様は「あなたが娘を救ってくれる」とおっしゃっていました。

娘のパミーナ様は、悪魔に連れ去られているのです。この近くにある、用心深く守られた城の中に。

タミーノ

わかりました。パミーナを救いましょう。

(物々しい音が響く)

この音は何だ?

3人の侍女

落ち着いて。女王様のおでましです。

山が左右に開き、玉座に座った夜の女王が現れる。

夜の女王

あなたは清く美しい心を持っています。あなたのような若者が、娘を奪われた母の心を慰めてくれるのです。

あなたこそが私の娘を助けることができるでしょう。

夜の女王のアリア・ひとつめ
「恐れずに、若者よ」O zitt’re nicht, mein lieber Sohn!

夜の女王と3人の侍女は、去って行く。

タミーノ

今の出来事は、夢か、幻か?

パパゲーノ

フムフム、フムフム
(口の錠前を指さす)

「五重唱」Hm! hm! hm! hm!

タミーノ

助けてあげたいが、私にその力はないんだ。

3人の侍女が戻ってきた。

3人の侍女

女王様がお許しになったわ。パパゲーノ。(口の錠前を外す)

王子様よ。女王様から贈り物です。この「魔法の笛」はあなたを守ってくれるでしょう。

タミーノに魔法の笛が手渡される。

パパゲーノ

さて、ここらで立ち去ろう。

3人の侍女

お待ちなさい。あなたは、お供として彼と一緒に行くのよ。

パパゲーノ

嫌だ。パミーナは恐ろしい男に捕まっていると言っていたじゃないか。そんなところに行きたくない。

3人の侍女

王子様が守ってくれるわ。パパゲーノには「銀の鈴」をあげましょう。

「魔法の笛」と「銀の鈴」が、あなたたちを守ります。

タミーノ

パミーナが捕まっている城には、どうやって行けばいいのですか?

3人の侍女

3人の童子が、城に導いてくれますよ。
さようなら。また会いましょう。

3人の侍女に見送られて、タミーノとパパゲーノは出発する。

第2場 パミーナは、軟禁中。いち早くパパゲーノと出会う

ザラストロの城の中

豪華なエジプト風やトルコ風の部屋。奴隷たちが噂話をしている。「パミーナが逃げたらしい」「モノスタトスが怒って探している」「モノスタトスに酷い扱いを受けているから、パミーナには無事に逃げて欲しい」

モノスタトス

おい、鎖を持ってこい。パミーナを鎖で縛るぞ!

モノスタトスによって、鎖で縛られたパミーナが部屋の中に連れられてきた。

パミーナ

モノスタトス。あなたには優しい心がない。いっそ殺して。
(気絶する)

部屋の窓からパパゲーノが入ってくる。パパゲーノ(鳥人間)とモノスタトス(肌が黒いムーア人)が出くわして、お互いに「ばけものだ」と驚き、ふたりとも部屋から逃げ出す。

パミーナ

(気絶したまま)お母様!!
(目を覚ます)つらいわ。このような暮らしが続くなんて。

パパゲーノが部屋に戻ってくる。

パパゲーノ

驚くなんて、俺はバカだな。黒い鳥がいるんだから、黒い人間だっているのは当たり前だ。

おや、絵姿にそっくりな娘だ。あなたは夜の女王様の娘だろう。

パパゲーノは、絵姿を見せる。

パミーナ

夜の女王!!お母様だわ。この絵姿は私よ。なぜここに?

パパゲーノ

夜の女王様が、ある王子様を気に入ったんだ。王子様は、あなたの絵姿を見て救出すると決めた。それで俺がお供として一緒に。

でも、なかなかあなたに会えないから、一足先に俺だけここに来たんだ。さあ、行こう。

パミーナ

待って。
あなたが悪人だったら・・・

パパゲーノ

俺が悪人だって?ひどいな。愛することを考えたら、そんなことを思わないはずさ。

パミーナ

そうね。あなたは優しい人ね。

パパゲーノ

そう言ってくれて嬉しいけど、恋人がいないんだ。

パミーナ

愛を感じる男性なら、優しい心を持っているわ。
愛の喜びを知りましょう。

「2重唱・恋を知る殿方には」
Bei Männern, welche Liebe fühlen

パパゲーノ

愛のときめきを分かち合うのが女のつとめ。
男と女は手を取り合い、神の世界に行くのだ。

パミーナとパパゲーノは、部屋を出て行く。

第3場 タミーノとパパゲーノは、ザラストロの試練に挑戦することに

森の中の3つの神殿

3人の童子が、タミーノに道案内をしている。

3人の童子

こちらです。男らしく勝つのです。

タミーノ

賢い童子たちよ、ありがとう。3つの門があるな。門には「ここには知恵と労働、芸術がある」と書いてある。この門をくぐろう。

タミーノが門を通ろうとすると、どこからともなく「さがれ」と言う声が聞こえてくる。3つの門すべて通ることができなかった。弁者が現れる。

弁者

若者よ、あなたは何を求めているのか?

タミーノ

ここには、悪人がいるのでしょう。パミーナを救いにきました。娘を失った母に頼まれたのです。

弁者

勘違いしている。女に騙されているのだ。だが、沈黙を守らねばならない。今はこれ以上言えない。

弁者は去る。残されたタミーノは、パミーナの身を心配している。3人の侍女にもらった「魔法の笛」で音を鳴らす。

タミーノ

神々よ、あなたを称える音をならしましょう。動物も喜ぶでしょう。ここには、パミーナがいない。彼女は大丈夫だろうか?

(笛の音を鳴らす)返事がない。
(もう一度鳴らす・・・パパゲーノが笛の音色で返事)

パパゲーノがパミーナに会えたんだ!!

タミーノは、ふたりを探してその場を去る。入れ替わりに、パパゲーノとパミーナ。

パミーナ

急ぎましょう。タミーノに早く会わないと、私たちは捕まってしまう。

パパゲーノ

(タミーノの笛の音色・・・パパゲーノが笛で返事)
タミーノの笛の音色だ!もうすぐ会えるぞ。

モノスタトスが奴隷たちを引き連れて、パミーナとパパゲーノを捕まえようとする。

モノスタトス

逃がさないぞ。鎖でつないでやる。奴隷たちよ、みんなで捕まえるんだ。

パパゲーノ

3人の侍女にもらった、この「銀の鈴」を使おう!!

鈴の音を鳴らすと、モノスタトスと奴隷たちが陽気に踊り出して、どこかに行ってしまう。奴隷たちがいなくなり、ふたりがホッとしていると、突然、勇ましい音楽が流れる。

パミーナ

大変。ザラストロが来るわ。

パパゲーノ

恐ろしい。このまま逃げてしまいたい。

従者の行列。その後に続いて、6頭のライオンに引かれた車に乗ったザラストロが登場する。ザラストロの前に出て、パミーナはひざまずく。後ろでパパゲーノは小さくなっている。

パミーナ

私は罪を犯しました。あなたの力から逃れようとしたのです。でも私に罪はありません。黒い男が私に言い寄るので仕方なくです。

ザラストロ

立つのです。娘よ。お前はある男を愛している。愛を強要しないが、お前を自由にすることはできない。

モノスタトスが、タミーノを引き連れてやって来た。

モノスタトス

ザラストロ様。忍び込んでいた不届き者を捕まえました。

パミーナ

あなたがタミーノね!なんて素敵なの!

タミーノ

パミーナ!やっと会うことができた!

タミーノとパミーナはすぐに恋に落ちて、抱き合う。モノスタトスは、ふたりの姿を見て憤慨。

ザラストロ

モノスタトス。お前に褒美を与えよう。連れて行け。足の裏を77回叩くのだ。これも私のつとめだ。

さて、ふたりを私たちの試練の神殿へ案内するのだ。

タミーノとパパゲーノは、頭巾を被らされる。ザラストロを称える従者たちの声が響く。

第2幕 神々の試練を乗り越えて、タミーノとパミーナが結ばれる

第1場 ザラストロ「タミーノが挑戦に失敗しても、我々より早く神のもとに行くだけだ」

森とピラミッド

森の中に、大きなピラミッドがある。ザラストロと神官たちが集まっている。

ザラストロ

神々は、パミーナとタミーノが結びつくのを決めれたのだ。私がパミーナを高慢な母から引き離した時と同じように、神々が決めたことだ。

タミーノは試練を乗り越え、私たちの叡智の神殿を守り、徳に報い、悪徳に罰を与える人間になるのだ。

弁者

タミーノは試練を乗り越えられるでしょうか。彼は王子です。無理ではないですか。

ザラストロ

王子であっても、人間なのだ。人間なのだから試練に乗り越えられる。

たとえタミーノが試練を乗り越えられなくても、私たちより早く神々のもとに行くだけだ。

イシスとオジリスの神よ。新しく結ばれる若いふたりを見守りたまえ。

第2場 沈黙の試練、3人の侍女がタミーノとパパゲーノの前に現れる

神殿の庭

夜、落雷が遠くに聞こえる。崩れ落ちたピラミッドが見える。頭巾を被った、タミーノとパパゲーノが連れられてくる。頭巾を外して、神官たちは去って行く。

タミーノ

恐ろしい夜だな。パパゲーノ、そばにいるのか?

パパゲーノ

もちろんいますよ。真っ暗で雷が鳴って、怖いんだ!

明かりを持って、弁者と神官がふたりのもとに来る。

弁者

若者よ。命の危険があるが、試練を乗り越えるつもりはあるのか?今なら引き返すことができるぞ。

タミーノ

パミーナを得られるなら、どんな試練も乗り越えられる。命の危険があっても!

弁者

お供の者よ、お前も試練に挑戦するのだな。パパゲーナという可愛い女を用意してある。

パパゲーノ

やらないよ!!命が大切さ。・・・でも、パパゲーナか。挑戦してみるか。

弁者

二人には、沈黙の試練に挑戦してもらう。

弁者と神官が去り、タミーノとパパゲーノは残される。どこからともなく、三人の侍女が現れる。

三人の侍女

タミーノ、パパゲーノ。こんな恐ろしい所にいて、危ないわ。早く逃げましょう。あの男たちの戯言を信じないで。

パパゲーノ

俺たち、危ないのか!!

タミーノ

しゃべるな!パパゲーノ。沈黙だ。

タミーノとパパゲーノは沈黙を守る。大きな落雷が鳴り、3人の侍女は去って行く。入れ替わりに、弁者と神官が来る。

弁者

沈黙の試練を乗り越えた。毅然と男らしく、誘惑に打ち勝ったのだ。それでは、次の試練に向かおう。

タミーノとパパゲーノに頭巾を被せて、別の場所に移動する。

パパゲーノ

なんで可愛い女の子と出会うために、こんな酷い目にあわなくちゃいけないんだ。

第3場 パミーナ、母である夜の女王に「ザラストロを殺せ」と命じられる

夜の綺麗な庭

月が光る、綺麗な花が咲いている庭。東屋で、パミーナが眠っている。

モノスタトス

どんな悪いことをしたってんだ。足の裏を叩くなんて酷いじゃないか。可愛い娘だ。ちょっとくらいキスしていいだろう。

モノスタトスが足を忍ばせて、眠っているパミーナに近づく。落雷と共に、夜の女王が現れる。

夜の女王

さがれ!!(娘に手を出すな)

パミーナ

(目を覚ます)お母様!

モノスタトスは、物陰に隠れて立ち聞きする。

夜の女王

私がここに送った男はどうなったのだ?このままでは親子の縁が切れてしまう。

パミーナ

彼は、神に仕える人に導かれることになりました。縁が切れるなんて、悲しい。お母様が守って下さるなら、どこにでも行きます。

夜の女王

私には、お前を守る力はもうないのよ。お父様が亡くなってから、私の力はなくなってしまった。

亡くなったお前の父「個人の宝は私や娘であるお前に残す」と言ったわ。だけど、一番大切な「太陽の力」はザラストロに渡したの。

お前の父は「女は男に導かれるのが正しい」と言い残したのよ。

パミーナ

ザラストロは、高潔な人ですが・・・

夜の女王

「短剣」を手に取りなさい。お前はザラストロを殺し「太陽の力」を奪い取るのだ。

地獄の復讐に燃える。死と絶望が我が身を焼き尽くす。お前がザラストロを殺さないなら、もう親子ではない。永遠に縁を切ってやる!!

夜の女王のアリア・ふたつめ
「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen

夜の女王は去り、夜の庭に残されたパミーナ。パミーナは、夜の女王が残した、短剣を手にして困っている。

パミーナ

殺すなんて・・・

物陰から出てくる、モノスタトス。

モノスタトス

聞いたぞ。「太陽の力」だと。あんな綺麗な子がザラストロを殺すのか。面白いことになるぞ。
(パミーナの前に姿を見せる)

俺がやってもいいぞ。
(パミーナの手から、短剣を奪い取る。)

パミーナ

聞いていたのね!!

モノスタトス

お前もお前の母さんも助かるだろう。だが、条件がある。俺を好きになれ。

パミーナ

嫌よ!!私の心は、タミーノのもの。

モノスタトス

それなら、お前を殺してやる!!

モノスタトスがパミーナを短剣で刺そうとしたところに、ザラストロが現れる。

ザラストロ

モノスタトス。お前を罰したいが、その短剣がここにあるのは、パミーナの母親が悪女だからだ。罪は、夜の女王にある。それゆえに、お前を罰しない。去れ!!

モノスタトス

娘がダメなら、母親の方に行ってやる!!

モノスタトスは走り去る。

パミーナ

母を許して下さい。私がいなくなってから、辛い思いを・・・

ザラストロ

分かっている。復讐心ではなく、愛の心が必要だ。神々は、若者に不屈の精神と勇気を与えるだろう。そして、お前は若者と結ばれるのだ。

この神殿では、復讐心を持つ者などいない。たとえ道を踏み外した者がいても、愛で導くのだ。互いに愛し合い、敵を許そう。

第4場 沈黙の試練。パパゲーノ、老婆と出会う。

広間

弁者と神官によって、タミーノとパパゲーノが頭巾を被らずに、広間に連れられてくる。

弁者

沈黙を守るのだ。パパゲーノ。沈黙を破れば、雷が鳴るぞ。

ラッパの合図が鳴ったら、この広間から出るのだ。

その場に残された、タミーノとパパゲーノ。

パパゲーノ

ああ!森の中にいれば鳥の声が聞こえるのに。

タミーノ

シッ!!

パパゲーノ

ひとりでしゃべるならいいだろ。のどが渇いた!ここの人たちは水一滴もくれないんだ。

ふたりの前に、老婆が水を持ってやって来る。お調子者のパパゲーノは、気安く声をかけてからかう。

パパゲーノ

お婆さん、水をくれるのか?もてなしてくれるんだな。ここに座れよ。年はいくつなの?恋人は?

老婆

年は、18だよ。10歳上の恋人なんだ。恋人の名前は、パパゲーノっていうの。ここにいるわ。

パパゲーノ

なんだって。じゃあ、あんたの名前は・・・

老婆が口を開こうとしたときに、雷が鳴る。老婆は去って行く。

パパゲーノ

もう懲りた。何もしゃべらない・・・

広間の天井から、3人の童子が食事がたくさん用意されたテーブルと共に、降りてくる。

3人の童子

タミーノ、パパゲーノ。またお会いしましたね。ザラストロから「魔法の笛」と「銀の鈴」をお返しするようにと言われてきました。

パパゲーノ

タミーノ、食べないのかい?すごく美味しいぞ。お酒もうまい!

3人の童子は去り、タミーノは「魔法の笛」を吹き始める。笛の音色を聞いて、パミーナが広間にやって来る。

パミーナ

ここにいらしたのね!音色が聞こえて、導かれてきたのよ。神の導きね。会えたのに、なぜタミーノは悲しそうなの?なぜ何も言わないの?

タミーノ

(ため息)ああ!!(去ってくれと合図する)

パミーナ

パパゲーノ、教えて。タミーノはどうしたの?

パパゲーノ

フムフム。(食べ物を口に頬張って、去ってくれと合図)

パミーナ

なんてひどいの。

愛が消えてしまったのね。愛の喜びは戻ってこない。タミーノ、見て下さい。この涙はあなたのために流れています。

パミーナは去って行き、食事中のパパゲーノと無言で悲しむタミーノ。

パパゲーノ

タミーノ、俺だってしゃべらないことができるんだ。

「広場を去るように知らせる」ラッパの合図が鳴る。

パパゲーノ

合図だな。俺はもう少ししてから行くよ。ご馳走があるし。

タミーノ

(ちゃんとついてくるんだぞ、と合図)

タミーノが広間から出ていき、パパゲーノがのんびりしていると、突然出てきたライオンに驚いて叫び声を上げる。戻って来たタミーノが「魔法の笛」でライオンを退治。タミーノとパパゲーノが広間から出て行く。

第5場 試練前の最後の挨拶。パパゲーノ、パパゲーナ(老婆から若い娘)に会う

ピラミッドの広間

弁者と神官たちが集まって、儀式をしている。ザラストロが登場。タミーノが続いて入る。

ザラストロ

王子よ。これまでの試練で、男らしく沈黙を守った。これから先も、危険な道を行かねばならない。最後に、パミーナに挨拶をしなさい。

頭巾を被った、パミーナが連れられてくる。

タミーノ

私を信じて下さい。あなたと同じ思いです。この試練を乗り越えて、あなたに会います。

パミーナ

あなたを心配するあまり、落ち着くことができません。再び心安らかに、会えますように。

タミーノとパミーナは、それぞれ別の場所に向かう。


パパゲーノがタミーノを見失って、迷子になっている。

パパゲーノ

タミーノ、どこにいるんだ。置いていかないで!俺はどこにいるんだ。ああ、こんな所に来るんじゃなかった。

さまよっていると、どこからともなく雷の音と「去れ」と言う声が響く。半泣きのパパゲーノの前に、弁者が現れる。

弁者

お前は、永遠に暗い土地でさまようはめになるところだった。神々が許してくれたのだ。

パパゲーノ

もういいんだよ。俺みたいなヤツは、世の中にたくさんいるさ。今はワインが飲みたい。

弁者

よかろう。ワインだ。

パパゲーノ

うまい、幸せだ。3人の侍女にもらった「銀の鈴」を鳴らそう。

俺が欲しいのは、ただひとつ恋人か女房だ。優しい人がいれば、それだけで幸せさ。でも、可愛い子はたくさんいるのに、誰も愛してくれない。

「娘か可愛い女房が一人」
Ein Mädchen oder Weibchen wünscht Papageno sich!

弁者がいなくなり、パパゲーノの前に、老婆が杖をついてやってくる。

老婆

さあ、二人で暮らすと誓うんだ。手を出すんだよ。何をぐすぐすしているんだい。早く決めないと、一生ここにいることになるよ!

パパゲーノ

一生ここに閉じ込められるって?!ああ、約束するよ。

(可愛い子を見つけるまでな。)

パパゲーノが老婆の手を取ると、老婆が、パパゲーノと同じ衣装の若い娘・パパゲーナに変身する。パパゲーノが驚いていると、雷が鳴り、弁者がパパゲーナを連れて行く。

弁者

パパゲーナ、さがるのだ。まだ早い。
パパゲーノ。引き下がらないなら、罰を与えるぞ。

パパゲーノ

引き下がるくらいなら、罰の方がいいや。・・・うわああ。

パパゲーノは、奈落に落ちていく。

第6場 パミーナが正気を失う。3人の童子が、彼女をタミーノのもとへ

小さな庭

3人の童子

大変だ。パミーナが悲しみのあまり正気を失っている。

パミーナは、母・夜の女王からもらった短剣を手に、正気を失っている。

パミーナ

(短剣を見て)あなたが私の花婿なのね。私の悲しみを終わらせるのよ。愛に苦しむより死んだ方がいいの。

3人の童子

おやめなさい。タミーノが悲しみますよ。彼はあなたを愛しているのですから。

パミーナ

それなら、なぜタミーノは私と話をしてくれないの?顔を背けるの?

3人の童子

理由は言えません。さあ、いらっしゃい。タミーノのところに行くのです。

第7場 タミーノとパミーナが、一緒に試練に挑戦する

二つの大きな山

二つの大きな山。一つの山は火が噴いていて、もう一つの山には滝が見える。裸足のタミーノ。試練への挑戦のために扉の前に立っている。パミーナが「タミーノ!」と呼ぶ声が聞こえてくる。

タミーノ

彼女と話していいですか?(許可が出る)

手を取り、一緒に神殿に行こう。夜と死を恐れない女性こそ、我々の世界に相応しい。

パミーナ

一緒に行きます。どんなところも、あなたと一緒に。

母が渡した「魔法の笛」を吹いてください。その笛は、亡くなった父のものです。その笛の音色が、私たちを守ってくれるでしょう。

タミーノとパミーナは、二人で試練に挑戦する。火をくぐり、水の中を通る。(火の試練・水の試練)すべての試練が終わり、タミーノとパミーナは光に包まれる。

第8場 パパゲーノとパパゲーナ、結ばれる

小さな庭

パパゲーノはひとり、うなだれている。

パパゲーノ

パパゲーナ、彼女に会いたい。パパゲーナ!

ああ、返事がない。呼んでも来てくれない。絶望だ。もう死んでしまおう。俺が首をつる前に、誰か止めてくれ。数を数えよう、ひとつ、ふたつ、みっつ。・・・誰も止めないんだ。もういい!

3人の童子

やめなさい。パパゲーノ。「銀の鈴」を鳴らすのです。そうしたら、あの子が出てくるよ。

パパゲーノ

そうだな!俺がバカだった。「銀の鈴」があったんだ。鳴らそう。

パパゲーノの前に、若い娘の姿のパパゲーナが姿を見せる。ふたりは愛を歌い合い、幸せになる。

第9場 暗い世界から、夜の女王が復讐にやってくる

夜の世界

暗闇の中でモノスタトスが手引きして、夜の女王と3人の侍女が神殿に入り込もうとしている。

モノスタトス

神殿はこちらです。そっと忍び込みますよ。約束はお忘れなく。

夜の女王

モノスタトス。約束は守るわ。娘のパミーナはあなたのものよ。

3人の侍女

夜の女王様、復讐が果たされますように。

第10場 暗闇から光の世界へ。愛と叡智が永遠に続く世界へ。

太陽の世界

雷が鳴り、暗い舞台が明るい光に包まれる。ザラストロを中心に、タミーノとパミーナ、弁者、神官などがそろっている。

夜の女王

私たちの力は破れた。永遠の夜に沈むだろう。

夜の女王と3人の侍女、モノスタトスが消えていく。

人々(合唱)

ザラストロを褒め称えよう。

ザラストロ

太陽は夜を追い払い、力を打ち砕いたのだ。

人々(合唱)

神々を感謝します。美と叡智が永遠に輝くだろう。

実際に「魔笛」の舞台を観るなら

「魔笛」は人気の演目なので、よく上演されています。2022年に、新国立劇場で公演。

【公式】新国立劇場オペラ「魔笛」の公演情報

「魔笛」のおすすめDVD

2018年、ザルツブルク音楽祭。

日本語の字幕付きです。

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