「さまよえるオランダ人」の原作「ハイネの小説」のあらすじと比較解説

さまよえるオランダ人の原作

ワーグナーの「さまよえるオランダ人」との比較ができるので、「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」を簡単にまとめておきます。

ハインリヒ・ハイネの小説「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」の中にある、オペラに関係する第7章「さまよえるオランダ人の寓話」は5ページほどです。

内容は、4つに区切ることができました。劇場で「さまよえるオランダ人」に関する作品を見たときの回想文という形になっています。

  1. 「さまよえるオランダ人の寓話」の説明
  2. 劇場で「さまよえるオランダ人」の作品を見る
  3. 劇の途中で、女性に誘われて席を立つ
  4. 劇場に戻り続きをみる。作品の結末
さいひろ

オペラよりロマンチックな話。でも、結びの文はドライ。

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「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」の第7章

1・「さまよえるオランダ人の寓話」の説明

さまよえるオランダ人の寓話は、有名だ。港に着くことが出来ず、永遠に海をさまよっている。

呪われた船は他の船を見つけると、不気味な何人かの船員が小舟に乗って、一束の手紙を持って行って欲しいと懇願する。受け取った船は、手紙を帆柱に釘打ちしなければならない。そうしないと、船が不幸な目に合うからだ。手紙の宛名は100年も前に亡くなった者宛てのものが多い。

船の船長は、オランダ人。かつて嵐の中、ある岬を「悪魔の名にかけて意地で通ろう」と言ったために、悪魔に呪われてしまった。呪いを解くには、女性の誠実な愛が必要。悪魔は女性に誠実さなどないと、オランダ人に対し、7年ごとに陸に上がり、女性と結婚して救済される道を残してあげた。気の毒なオランダ人は結婚して救われるものの、女性に逃げられて海に戻っていった。

2・劇場で「さまよえるオランダ人」の作品を見る

私は、劇場で「さまよえるオランダ人の寓話」に基づいた作品を見た。

作品では、7年経ち、オランダ人は陸に上がり、スコットランドの商人と友情を結んだ。商人からダイヤモンドを安く買い、娘がいるというので結婚を申し込むと、商人から承諾を得た。

スコットランド商人の家では、娘が花婿を待っていた。娘の家には、代々伝わる「悲しそうな表情の立派な風貌の男の肖像画」がある。古くから伝わる遺産で、祖母によると「100年前に、さまよえるオランダ人を実際に見て描いた絵」という話だ。そしてまた、絵にまつわる警告も伝わっていた。「女性はこの人物に警戒しなければならない」と。

肖像画の掛かる部屋で花婿を待っていた娘は、オランダ人が部屋に入ると息を飲んだ。オランダ人自身も絵に驚いた。

これは、代々家に伝わる肖像画です。さまよえるオランダ人を実際に見て描いたと言われています。

オランダ人

船乗りの迷信だろう。さまよえるオランダ人はお気の毒様だな。

・・・だが、彼は大海原でどれほどの苦痛を耐えているだろうか。生と死に受け入れられず、永遠に海をさまよっている。彼の乗る船には錨はなく、彼の心には希望がないだろう。

娘は花婿の顔を真剣に見て、肖像画を横目で見比べる。静かにオランダ人の話を聞いていた。

オランダ人

君は私に誠実でいてくれるか?

死ぬまで誠実でいると、誓いましょう。

3・劇の途中で、女性に誘われて席を立ち、劇場の外へ

劇場で作品を見ていると、背後から女の笑い声。魅惑的、享楽的な女だった。その女の誘いに乗り、劇場を抜け出した。私は過去に出会った、享楽的な女たちを思い出す。

さいひろ

2ページほどありますが、内容をよく読んでみたところ、オペラには関係ないと思います。ただ、5ページ(4ページと半分)中の2ページ分がこの部分です。なので、ハイネの主張はここにあるはず。

結びの「男は女によって身を滅ぼすことがある」の主張を強めるために、ページを多く割いているのかな、と考えました。

4・劇場に戻り続きをみる。作品の結末

私は劇場に戻り、舞台の最後の結末を見た。

海岸の岸壁で、さまよえるオランダ人の妻が絶望し、海を行く船を見ていた。不気味な船の上で、オランダ人は決意していた。「愛する人を、呪いの運命に巻き込みたくない」と。船から妻に叫んだ。

オランダ人

私は、さまよえるオランダ人。恐ろしい呪いに巻き込みたくない。

同じく、船のオランダ人に向かって叫ぶ。

私は今まで誠実でした。あなたに対する誠実さを死ぬまで守ることの出来る、確かな方法を知っています。

岸壁から海に飛び込み、誠実な愛を証明した。呪いは解けてオランダ人は救済され、幽霊船は海に沈む。

思うに私が考える「さまよえるオランダ人」の寓意はこんなものだ。

女性は、さまよえるオランダ人のような男と結婚してはいけない。
男性は、
一時的にうまくいっても、女性によって破滅することがある。

ハイネの主張・男は女によって破滅することがある

ハイネが作品を通して言いたかったことは、上の3の部分「享楽的な女の存在」と最後の2行、特に「男は、時に、女によって破滅することがある」です。

「さまよえるオランダ人」の話は、主張を伝えやすくするためのクッションみたいな役割かなと思います。

ワーグナーのオペラとハイネの原作を比較

オペラ原作
物語の舞台ノルウェースコットランド
オランダ人ゼンタと恋人の関係を知り、去る愛のために去る
ゼンタ(娘)肖像画に恋をする静かに話を聞く女性
ダーラント(父)お金に目がないオランダ人と友情
猟師ゼンタと恋人登場しない
作品のテーマ女性の犠牲による、男性の救済人生訓

「さまよえるオランダ人」のあらすじの方でも書きましたが、オペラの舞台がノルウェーになったのは、ワーグナーが嵐に巻き込まれた経験をしたから。

個人的には、作品のテーマが逆のほうがしっくりくるなと。オペラを見たときは、人生訓「慌てて結婚すると、男は変な女と結婚する羽目になるし、女はいわくつきの男と結婚するぞ。」を感じたし、原作は、まともな男女の「女性の愛による、男性の救済」という伝説話のような印象です。

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