ラインの黄金・序夜|あらすじと簡単解説・ワーグナー

楽劇「ラインの黄金」は、ワーグナーの「ニーベルングの指環」四部作の「序夜」にあたる作品です。

「ニーベルングの指輪」は「序夜・第一夜・第二夜・第三夜」とあり、全曲を演奏すると四夜に渡ります。

「ラインの黄金」の見どころ、聴きどころは、「神々のヴァルハラへの入場」雷の神ドンナーが雲を集め雷を起こし、豊穣の神フローが虹の橋を架け、神々が虹の橋を通り城に入場する場面です。

タップできる目次

相関図と登場人物(ヴォータン、ローゲ、アルベリヒ)

ラインの黄金・ニーベルングの指環・序夜  相関図
楽劇「ラインの黄金」の相関図・タップで拡大表示

「ニーベルングの指輪」の全体図では「ラインの黄金」はピンク色の部分になります。

楽劇「ニーベルングの指環」の相関図・タップで拡大表示
ヴォータン神々の長、戦いの神バリトン
ローゲ火の神テノール
フリッカ結婚の女神、ヴォータンの妻メゾソプラノ
フライア美の女神、フリッカの妹、フローと双子ソプラノ
フロー豊穣の神、フライアの双子の兄テノール
ドンナー雷の神バリトン
エルダ知恵の女神アルト
ニーベルング族(小人)
アルベリヒラインの黄金を盗むバリトン
ミーメアルベリヒの弟テノール
巨人族
ファーゾルト兄、女が欲しいバス
ファーフナー弟、狡猾バス
ラインの乙女
ヴォークリンデライン川の妖精ソプラノ
ヴェルグンデメゾソプラノ
フロースヒルデアルト

作曲ワーグナー・初演・原作・台本・上演時間

ラインの黄金 Das Rheingold

  • 作曲 ワーグナー
  • 初演 1869年9月22日 バイエルン宮廷歌劇場
  • 原作 北欧神話「ヴォルスンガ・サガ」、古代北欧歌謡集「エッダ」、ドイツ叙事詩「ニーベルンゲンの歌」他
  • 台本 ワーグナー ドイツ語
  • 上演時間 2時間30分(全1幕)

楽劇「ラインの黄金・ニーベルングの指環・序夜」の簡単なあらすじ

ライン川の川底には、水の精ラインの乙女たちが「ラインの黄金」を守っている。乙女たちを見に来た小人アルベリヒは、乙女たちに相手にされない。乙女たちは「ラインの黄金」は愛を諦めた者によって「指輪」に変えることができ、「指輪」で世界を支配できると言う。アルベリヒは「ラインの黄金」を盗み出す。

山の上の神々のいる世界。神々の長ヴォータンは自らの城を建てるのに、巨人兄弟に依頼し、報酬に女神フライアを渡すと約束していた。城は完成し、巨人兄弟が報酬を受け取りに来た。だが、女神フライアは、神々が食べると若返る「黄金のリンゴ」の世話をする人物だった。フライアを巨人に渡すと、神は老けて滅びることになる。

火の神ローゲの助言で、ヴォータンとローゲは「ラインの黄金」を盗んだアルベリヒのいる地下の国へ行く。アルベリヒを罠にはめて、「ラインの黄金からできた指輪」とアルベリヒの宝を奪い取る。アルベリヒは、指輪に呪いをかける。

神々はアルベリヒから盗んだ宝と指輪で、女神フライアを取り戻し、城を手に入れる。「指輪」は巨人兄弟の手に渡るが、争いが起こり弟が兄を殺害。「指輪」の所有者は、巨人弟に。神々は虹の橋を渡り、完成した城に華々しく入場するが、「ラインの黄金」を失ったラインの乙女たちの嘆きが響く。

「ラインの黄金」全1幕の簡単な対訳

序奏 「ニーベルングの指環」全体の前奏曲

「ニーベルングの指環」全体の前奏曲にあたります。

第1場 アルベリヒ、ラインの黄金を盗む

ラインの河底

神話の時代。暗い水の底、平らな場所はなく、岩が占めている。ラインの乙女の一人が、優雅な泳ぎで旋回している。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
ヴァイア、ヴァーガ。波よ、ゆりかごのように揺れよ。

「ヴァイア、ヴァーガ」Weia! Waga! Woge, du Welle

ヴェルグンデの声(ラインの乙女)
(上から)一人で見張っているの?

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
あなたがいれば、二人になるわ。

ヴェルグンデが上から降りてきて、お互いに捕まえようと、追いかけっこを始める。

フロースヒルデの声(ラインの乙女)
(上から)おーい、おてんばな姉妹たち!

フロースヒルデも上から降りてきて、ラインの乙女三人がそろう。フロースヒルデは、遊ぶ二人の間に入っていさめる。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
眠れる黄金の見張りをしましょう。黄金の寝床を守るのよ。さもないと、二人とも罰が当たるわよ。

ラインの乙女が遊ぶ中、さらに深く暗い川底から小人アルベリヒが現れて、乙女たちをこっそり見ている。

アルベリヒ

へへ、水の妖精さん。なんて可愛いんだ!うらやましい人たちだ。ニーベルハイムの闇からやってきてよかった!こちらに来てくれないかな。

「へへ、妖精さん」Hehe! Ihr Nicker!

声を聞き、ラインの乙女は遊ぶのをやめる。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
おい!誰がいるの?

ラインの乙女3人が下に見に行く。

ヴォークリンデとヴェルグンデ(ラインの乙女)
(アルベリヒを見て)うわ、不気味なやつ。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
黄金を守るのよ!父はこのような者を警告していたわ。

フロースヒルデが一番に急浮上し、二人が続く。ラインの乙女は中央の岩に集まる。

アルベリヒ

上にいる皆さん!

ラインの乙女たち
あなたはそこで何をしようっていうの?

アルベリヒ

見ているだけで、遊びの邪魔はしないよ。もしこっちに来てくれたら、ニーベルングの俺は君たちと一緒にふざけ合いたいんだ。

君たちはきらめきの中で、明るく美しい。誰か降りてきて、細い体を俺の腕に絡めてくれたら、どれほど嬉しいだろう。

ラインの乙女たち
あいつを恐れるなんて笑ってしまうわ。恋をしているのよ。からかってやりましょう。

ヴォークリンデが、アルベリヒのいる岩の頂に座る。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
こっちにいらっしゃい。

アルベリヒは岩の上に登ろうとするが、足が滑る。

アルベリヒ

なんてツルツルして滑りやすい岩。(くしゃみ)湿った水で鼻がいっぱいだ。

岩の上にたどり着く、アルベリヒ。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
(笑って)私の求婚者が、くしゃみで登場よ。

アルベリヒ

俺の恋人になってくれ。

アルベリヒはヴォークリンデを抱きしめようとするが、彼女はすぐに隣の岩に移動する。

アルベリヒ

君たちには簡単でも俺には無理なんだ。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
(下に降りて)それなら降りてきて。

アルベリヒ

下のほうがいいだろう。

アルベルヒが下に降りるが、すぐにヴォークリンデは上に行く。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
(上に)こっちに来て。

ヴェルグンデとフロースヒルデ(ラインの乙女)
アハハハ!

アルベリヒ

素早い魚を捕まえるにはどうすればいい?

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
おーい、聞こえないの?私の方に来なさいよ。ヴォークリンデはやめなさい。

アルベリヒは振り返って、ヴェルグンデを追いかけ始める。

アルベリヒ

あんな恥ずかしがり屋より、君の方が美しい。俺の恋人になってくれ。

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
そんなに恋をしているなら、あなたを顔を見せてごらん。(近くで見て)毛深く醜い男。黒くて薄汚れて硫黄の匂いがする小人だ。あんたを気に入ってくれる人を探しな。

アルベリヒ

なんだと!俺を好きでなくても、手放さないぞ。

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
捕まえられるものならね、ほら、逃げていくわよ。

ヴォークリンデとフロースヒルデ(ラインの乙女)
アハハハ!

アルベリヒ

冷たい骨ばった魚め。お前には俺が美しく見えないのか?かわいくて遊び心もなく、滑らかで明るくないからか?そんなに俺が嫌なら、ウナギと仲良くしておけ。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
愚かなお姉さんたち。私はあなたが美しく見えるわ。

アルベリヒ

お前に会ってから、彼女たちが醜く見えてきた。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
私を誘惑した歌声を聴かせて。

アルベリヒ

優しく褒められると、ドキドキしてくるな。

フロースヒルデはアルベリヒを両腕で抱きしめる。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
あなたのまなざし、髪の毛を抱きしめていたい。ヒキガエルのようなあなたの姿、あなたのしゃがれ声を見て聞いていられたら。

ヴォークリンデとヴェルグンデ(ラインの乙女)
アハハハ!

アルベリヒ

ああ、苦しい。3人目まで俺をだました。狡猾で邪悪な女たち。

ラインの乙女たち
ヴァララ、恥を知りなさい。下で大声を出さないで。私たちの言うことを聞きなさい。内気なあなたがそれほど好きなら、捕まえればいいじゃない。私たちは誠実なのよ。私たちを捕まえた求婚者には、忠実なのよ。流れの中では、そんなに簡単に逃げられないのよ。

「恥を知りなさい」Schäme dich, Albe!

アルベリヒに追いかけさせようと挑発して、バラバラに泳ぐラインの乙女。

アルベリヒ

怒りで燃えている。一人は俺に屈することになるだろう。

死に物狂いで追いかけるアルベリヒとそれをかわすラインの乙女。川に一筋の光が差し込み、岩の小高い部分にあたり黄金に輝く。アルベリヒは黄金の輝きを呆然と見ている。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
ご覧なさい。姉妹たち。目覚ましの太陽が水底に微笑みかけるわ。

「見て、姉妹たちよ」Lugt, Schwestern!

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
太陽は波をかき分けて、眠る黄金に挨拶している。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
太陽は黄金の目にキスをして、目覚めさせようとする。

ラインの乙女たち
ハイアヤハイア!ラインの黄金!輝く喜びよ、なんて気高く微笑むのかしら。川は揺らぎ、潮が燃える。私たちは泳ぎ踊り歌い、あなたの寝床を巡りましょう。

「ラインの黄金!」Rheingold! Rheingold!

アルベリヒ

(黄金を見たまま)そこに光り輝くものは何だ。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
あなた、どこから来たのよ?ラインの黄金を知らないなんて。この輝きの中で至福の時を過ごしましょう。私たちと一緒に泳いでもいいのよ。

アルベリヒ

黄金は泳ぐのに使うだけか。俺には関係ないな。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
奇跡を知れば、黄金を冒涜することはないでしょう。

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
ラインの黄金から指輪を作ることができれば、その者は計り知れない力を手にすることができるのよ。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
父はそれを言ってはいけないと命じたはずよ。清らかな宝を賢く守るために、愚かな者が川から盗まないように。だから静かにしなさい。おしゃべりたち。

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
あなたは一番真面目ね。

ヴォークリンデ(ラインの乙女)
愛の力を放棄した者、愛の欲望を追い払う者だけが、黄金を指輪に作りかえる魔法を手に入れることができるのよ。

「愛の力を拒む者だけが」Nur wer der Minne Macht entsagt

ヴェルグンデ(ラインの乙女)
命あるものは愛を求め、誰も愛を避けないものよ。

フロースヒルデ(ラインの乙女)
恐れる必要はないわね。あいつの愛の熱さは、私を焼き尽くすほどだったわ。

ラインの乙女たち
ワララ!可愛い小人、あなたも笑ったらどう?黄金の輝きの中で、あなたは美しいわ。

輝く水の中で、ラインの乙女が上に下に泳ぐ。

アルベリヒ

世界のすべてを手に入れられるのか?愛は手に入らなくても、欲望は満たせるのでは?馬鹿にするがいい。ニーベルングが、お前たちのおもちゃ(黄金)に近づくぞ。

アルベリヒは猛烈な勢いで岩を登る。

ラインの乙女たち
(笑いが止まらない様子で)小人が怒ったわ。愛があいつを狂わせるのね。

アルベリヒ

まだ怖くないのか?これからは暗闇の中にいろ。

(黄金を手にして)お前たちの光を消し、岩から黄金を奪い、復讐の指輪を作ってやる。潮も聞くといい。俺はこうして愛を呪うのだ。

「こうして愛を呪うのだ」so verfluch’ ich die Liebe!

岩礁から黄金を奪い、急いで深みに潜っていき、姿が見えなくなる。すぐに辺りが暗くなり、ラインの乙女が追いかけていく。

ラインの乙女たち
(口々に)泥棒を捕まえて!黄金を守れ!助けて。

川の奥底から、アルベリヒの嘲笑が聞こえてくる。

第2場 ヴォータン、城を作った巨人へ支払を渋る

ライン河畔の山上

山の上の開けた場所。神々の長ヴォータンと妻フリッカが寝ている。山には城壁が見える。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
(目覚めて)ヴォータン、起きてください。

最初は寝ぼけているが、すぐに目覚める。

ヴォータン

(目覚めて城を見て)永遠の事業が完成したぞ。山の上には神々の城が、美しく輝いている。

「永遠の作品が完成した」Vollendet das ewige Werk!

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
あなたは城を喜びますが、私はフライアを心配します。約束した支払いを思い出してください。城は出来上がり、契約は行われるのです。契約を忘れたのですか?

ヴォータン

よく覚えている。城を建てた者が要求したことならば。契約により、彼らを手なずけたのだ。支払いは気にするな。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
笑えるほどの軽薄さよ。あなたの契約を知っていたら、その欺瞞に抵抗していたでしょうよ。しかし、あなたち男は女を退けて、巨人たちと交渉した。恥ずかしげもなく、私の可愛い妹フライアを差し出したのよ。

ヴォータン

お前が城を作ってくれと頼んだのに?

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
あなたが浮気者だから、あなたをつなぎとめるために、素晴らしい住居と調度品でくつろいでもらえるようにしたかったのよ。それなのに、城には城壁と要塞があるわ。あなたは戦うことしか考えていない。

ヴォータン

許してくれよ。お前を妻として迎えるために片目を惜しまなかったのだぞ。お前が喜ぶほどに、私は女性を敬っている。それにフライアを諦めてはいない。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
それならあの子を守って。怯えているわ。

フライア(美の女神)
助けて。向こうの岩からファーゾルトが私を脅かすのよ。

ヴォータン

放っておけ。ローゲはどこに行った?

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
あの狡猾な男を信じるなんて!私たちは彼にひどい目にあわされているわ。

ヴォータン

勇気が尊ばれる場面なら、彼を頼ることはないだろう。敵を妬みを利用するには、ローゲの策略が必要なのだ。この契約を結べと言った男が、フライアの開放を約束したのだ。私は彼を信頼する。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
ローゲは、あなたをひとりにしているわよ。ああ、巨人が来る。狡猾な助けはどこにいるのよ!

フライア(美の女神)
フロー、ドンナー、私を助けて!

巨人の兄弟ファーゾルト、ファーフナーが現れる。

ファーゾルト(巨人、兄)
お前たちが眠っている時も、俺たち二人は城を作っていた。大変な苦労をして岩と積み上げたのだ。(指差し)あそこに見えるのが成果だ。俺たちに支払いをして、城に入るがいい。

ヴォータン

報酬とはなんのことかな?

ファーゾルト(巨人、兄)
忘れたとは言わせない。フライア、彼女を連れて帰る。

ヴォータン

別の謝礼を考えろ。フライアは売り物ではない。

ファーゾルト(巨人、兄)
(困惑して、言葉を失い)契約を破るのか?その槍に書かれた盟約のルーン文字を冗談というのか?

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
愚かな兄だ。今になって、欺瞞に気が付いたのか。

ファーゾルト(巨人、兄)
光の息子よ、お前が何者であるかは、契約によってである。契約はお前の力である。俺たちより賢いお前は、自由な俺たちを和平に結び付けた。この契約を破れば、お前の知恵を呪う。お前の定めた和平から俺たちは離脱するだろう。

ヴォータン

冗談の契約を本気にするとは。美しく愛らしい女神のフライアがお前たちの何の役に立つというのか?

ファーゾルト(巨人、兄)
俺たちを馬鹿にしているのか。お前たちは美しさでこの世を支配しているではないか。だが、愚かにも石の塔や城のために、女を担保にしたのだ。俺たちは苦労しながら、女を得ようとした。貧しい俺たちと一緒に住む女を求めるために。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
フライアを捕まえても何の意味もない。だが、神々から彼女を離すのは価値がある。

(小声で)フライアの庭には、黄金のリンゴが実っている。彼女しか世話ができない。リンゴは神々に、老いることのない若さを与える。フライアを失えば、彼らは老けて弱くなり、消えていくだろう。

(大声で)彼女を神々から捕らえるのだ。

その場に、雷の神ドンナー、豊穣の神フローが現れる。

フロー(豊穣の神)
(フライアを抱き)おいでフライア。彼女から離れろ。

ドンナー(雷の神)
私のハンマーの強い一撃を感じたことがあるだろう。

ファーゾルト(巨人、兄)
争いは求めていない。報酬を要求するだけだ。

ドンナーがハンマーを振り下ろそうとする。

ヴォータン

乱暴はやめろ。(ローゲの到着)やっと来たか。お前のひどい契約に決着をつけるために。

ローゲ

何ですって?私がどんな契約をしたっていうんです?巨人たちとの契約で私に相談した件ですか?

そもそも私は家や囲炉裏など必要ありません。フローやドンナーは家を必要とし、ヴォータンも城と広間を求めた。完成した城はしっかりと建っていますよ。城壁を念入りに調べました。巨人たちはきちんと仕事をしていましたよ。私はここにいる人たちのように、なまけていません。私を叱る者は、嘘つきだ。

「何ですって?どんな取引を私がしたって?」Wie? Welchen Handel hätt’ ich geschlossen?

ヴォータン

お前は私から巧みに逃れるな。私は神々の中でお前のただ一人の友人だぞ。私にアドバイスをくれ。

ローゲがなかなか解決策を言わないので、神々がののしり、巨人たちが支払いをせっつく。

ローゲ

いつもローゲは恩を忘れられる。あなたのことを心配して世界の隅々まで探しました。巨人が満足するフライアの代わりになるものを。

探しても無駄でした。この世には男にとって女の喜びより価値のあるものはありません。命がある水中、地中、空中と探し尋ねても笑われるばかり。

一人見つけました、愛を断念した男を。男は輝く黄金のために女の愛情を捨てました。ラインの乙女たちは不幸を嘆き訴えるのです。ニーベルング族の夜のアルベリヒは、乙女たちに好意を求めたが無駄になり、復讐のためにラインの黄金を盗んだのです。

この黄金こそ、女の愛情より価値があるものなのではと思いました。

ヴォータン、乙女たちは盗人に罰を与え、黄金を川に戻してほしいと訴えています。私はこのことを伝えると乙女たちに誓いました。これで、ローゲはその約束を果たしたのです。

「いつもローゲは恩を忘れられる」Immer ist Undank Loges Lohn!

ヴォータン

私が困っているのに、どうやって助けるというのか。

ファーゾルト(巨人、兄)
(ファーフナーに)あの小人に黄金をやってはいけない。あいつには面倒をかけられている。取り押さえても、すぐに逃げるからな。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
黄金があいつに力を与えたら、俺たちに仕返しを考えるかもな。ローゲ、その黄金にはどれほど大きな価値があるのか?

ローゲ

ラインの川底にあるうちは、乙女たちの遊び道具にしかならない。だが、黄金が指輪に作りかえられると、男に世界を勝ち取らせることができる。

ヴォータン

ラインの黄金の噂は聞いたことがある。だが、私は指輪を作り出す技をどうやって得ることができるのか?

ローゲ

黄金を指輪に変えるのには隠された呪文がいるが、愛を断念した者には呪文を操るのは簡単だ。あなたは指輪を作らなくていい。すでに、アルベリヒは指輪を我がものにした。指輪はもはや彼のものだ。

ドンナー(雷の神)
あの小人は我らを支配しかねないぞ。指輪を奪い取らねば!

ヴォータン

そうだな。どうすればいい?

ローゲ

盗むのです。泥棒が盗んだものを盗み返すのです。アルベリヒは抵抗するでしょうから、賢く手際よくやらねばなりません。そして、乙女たちに赤いおもちゃ(黄金)を返してやりましょう。それが乙女たちの願いなのですから。

ヴォータンは黙って考えている。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
(ファーゾルトに)フライアよりも黄金の方が役に立つ。

ファーゾルトは渋々納得する。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
聞け、ヴォータン、待たされている俺たちの言葉を。フライアはそちらに残そう。もっといい支払いを見つけたのだ。ニーベルングの赤い黄金をくれ。俺たちはあの小人を捕まえることはできなかったが、お前はできるだろう。

ヴォータン

お前たちの代わりに苦労しろということか。

ファーゾルト(巨人、兄)
(フライアを捕まえて)人質にフライアをもらう。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
夕方まで人質として世話をする。もしラインの黄金が用意できなければ、女は俺たちに従ってもらう。

巨人たちに担がれて、フライアは連れ去られる。

ローゲ

(巨人たちを見ながら)野を越え、ライン川を歩いて渡る。巨人に背負われたフライアはつらそうだな。巨人の国境で、休憩するんでしょうね。

(神々を見て)神々の皆さん、なんだか老けて見えますよ。そうか、フライアの黄金のリンゴを食べていないからだ。巨人たちはあなたたちの若さがリンゴによるものだと気が付いたのでしょう。フライアは私にあまりリンゴをくれなかったので、私に影響はないですけどね。それに、私は半分しか神ではないからな。

リンゴがなければ、容貌は衰え世の笑いものになり、神々は終わりを迎えるでしょうよ。

半分しか神ではない…ローゲは、巨人族の血が混じっている半神。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
ヴォータン、迷惑な人。あなたの軽率さが、皆に恥をもたらしたわ。

ヴォータン

ローゲ、一緒に降りていくぞ。地下のニーベルハイム(ニーベルング族の国)へ。

ローゲ

ライン川を潜って通っていきますか。

ヴォータン

ライン川は通らない。

ローゲ

それならば、硫黄の坑道を通っていきましょう。

ふたりは坑道に入っていく。

間奏 …ローゲの動機から、ニーベルング族の動機、鍛冶の音

第3場 ヴォータンとローゲ、アルベリヒの財産と指輪を奪う

地下の国ニーベルハイム

アルベリヒは、弟のミーメをこき使っている。

ミーメ(アルベリヒの弟)
痛い、耳を引っ張るな。

ミーメが持っていた鎖細工を奪い取る、アルベリヒ。

アルベリヒ

完成しているじゃないか。時間を稼いで盗もうと思っていたのか。(鎖細工の「隠れ頭巾」をかぶり)頭にぴったりだ。(小声で)「夜と霧よ、姿を消せ。」どうだ、弟よ、姿が見えるか?

アルベリヒの姿が見えなくなる。

ミーメ(アルベリヒの弟)
どこにいる?見えないぞ。

アルベリヒ

(姿を消したまま)盗もうとした褒美をやろう。鞭で打ってやる。俺の姿が見えずとも、働き続けろ。お前たちに安息はない。声が聞こえたら、彼が近づいてくるぞ。ニーベルング族の王がな。

鞭の音だけ聞こえて、ミーメは悲鳴を上げて倒れる。坑道から出てきた、ヴォータン、ローゲが地下の国に到着。

ローゲ

ここがニーベルハイムです。

ヴォータン

大きなうめき声が聞こえるぞ。

ローゲ

(ミーメを助け起こしながら)ミーメ、何がお前を痛めつけたのか?

ミーメ(アルベリヒの弟)
俺をこき使う血のつながった兄の言いなりなんだ。

ローゲ

お前をこき使うとは、何がそいつに力を与えた?

ミーメ(アルベリヒの弟)
アルベリヒは、ラインの黄金から指輪を作った。その力にみんな驚き、ニーベルハイムは支配されている。以前はのんきな鍛冶屋だったのに、今はアルベリヒのためだけに働くばかり。

兄は俺にばかりつらく当たり、鎖の頭巾を作るように命じた。俺は気が付いた。頭巾は魔力を持つのではと。頭巾の力であいつの支配から逃げて、うまくいけば指輪を奪い取れるかもしれないと考えた。

ローゲ

なぜ計画がうまくいかなかった?

ミーメ(アルベリヒの弟)
俺は鎖の頭巾を作ることはできたが、兄が思いついた呪文はわからなかった。兄は頭巾を奪い取って、頭巾の力をわからせた。目の前から消えて、俺を散々痛めつけたんだ。

ミーメは泣き、ヴォータンとローゲは笑う。

ローゲ

(ヴォータンに)これはたやすい話ではないですよ。

ヴォータン

お前の助けがあればなんとかなる。

ミーメ(アルベリヒの弟)
(二人の笑いに困惑し)あれこれ聞くが、あんたたちは何者だ?

ローゲ

友人だ。ニーベルングの人々を苦しみから解放しよう。

ミーメ(アルベリヒの弟)
アルベリヒが来る!

ヴォータンは座って待ち構える。隠れ頭巾を脱いだアルベリヒが鞭を振り回し、ニーベルングの小人たちを追い回している。

アルベリヒ

のろまな連中。宝を運べ。(ヴォータンとローゲに気がつき)そこにいるのは誰だ?勝手に忍び込んだのか?

(ミーメに)こいつらと話していたな。さっさと仕事にかかれ。(鞭を振ってミーメを集団に戻す)

(指輪を外し上に掲げて)指輪の主の言うことを聞け。(人々が散り散りに去る)

(ヴォータンとローゲに)それで、何の用だ?

ヴォータン

ニーベルハイムの噂を聞いたのだ。アルベリヒが不思議なことをやっていると。

アルベリヒ

お前たちが何者か知っている。もう恐れる必要はないのだ。あの山積みの宝の山を見ろ。

ローゲ

お前はすごい力を手に入れたようだな。だが、ここでは役に立たないでしょう。喜びのない国では。

アルベリヒ

宝を使って世界を自分のものにする。

お前たちは穏やかな風の吹く中で暮らし、愛し笑いあっているが、俺が黄金の拳ですべての神々を捕まえてやる。ニーベルングの宝が地上に現れたときには、闇の軍勢に気をつけろ。

「闇の軍勢に気をつけろ」Habt acht vor dem nächtlichen Heer

ヴォータン

愚かな奴め。

アルベリヒ

何と言った?

ローゲ

落ち着いて。お前はすごいな。星や月、太陽であってもお前に仕えないといけないだろう。だが、お前が眠っている時はどうなる?どうやって身を守るのだ?

アルベリヒ

そのために姿を隠す頭巾を考えたのだ。また、どんな姿にでも変身できる。俺を探しても誰にも見えない。だから安心していられる。

ローゲ

素晴らしい奇跡だが、信じるわけにはいかない。そのようなことが可能ならお前の権力は永遠に続くだろう。どんな姿でもいいから変身して見せてくれ。

アルベリヒ

「大きな蛇、とぐろを巻け」

隠れ頭巾を使って大蛇に変身して、元の姿に戻る。

ローゲ

大きくなれることはわかった。小さくなることはできるかな?例えば、ヒキガエルとか。

アルベリヒ

「灰色のヒキガエルよ、這え」

ローゲ

(ヴォータンに)ヒキガエルを捕まえて!

ヴォータンがヒキガエルを踏みつけ、ローゲが隠れ頭巾を外し、アルベリヒは踏みつけられたまま元の姿に戻る。

アルベリヒ

忌々しい。捕まってしまった。

ローゲ

(ヴォータンに)しっかり縛り上げてください。地上に上がりましょう。

間奏 …ニーベルング族の動機から鍛冶の音、巨人の動機、ヴァルハルの動機

第4場 一応支払い完了、ヴァルハル城へ神々の入城

ライン河畔の山上

縛ったアルベリヒと共に、地上に現れるヴォータンとローゲ。

ローゲ

観念しろ、これがお前が手に入れようとしていた世界だ。

ヴォータン

お前は捕らわれの身だ。開放してほしければ、身代金を払え。

アルベリヒ

なんて間抜けだ。復讐してやる。何が欲しいか言え!

ヴォータン

お前の宝と黄金だ。

アルベリヒ

欲深いやつらだ。だが、指輪さえ手放さなければ、宝はまた手に入れられる。今回は教訓のために手放してもいいだろう。(ヴォータンに)片手を解けば、持ってこさせよう。

片手が解かれ、指輪に呪文を唱える。穴からニーベルングの小人たちが宝を持って出てくる。

アルベリヒ

あいつらに縛られた姿を見られるとは。あそこに運べ。命じた通り。こっちを見るな、さっさと戻れ。支払いは済ませた。行かせてくれ。ローゲの隠れ頭巾は返してくれ。

小人たちは宝を山のように積み上げて穴に戻っていく。

ローゲ

頭巾はもらう。

ヴォータン

お前の指に黄金の指輪があるのが見える。

アルベリヒ

命ならやるが、指輪はダメだ。

ヴォータン

指輪を要求する。

アルベリヒ

自分の体であろうとも、指輪以上の価値はない。

ヴォータン

冷静になれ。誰から黄金を奪い、指輪を作ったのかを。

アルベリヒ

盗人のお前が、俺の悪事をなじるのか?お前自身がラインから黄金を盗みたかったんだろう?俺が罪を犯しても、自分が起こしたことだ。だが、もし俺から指輪を奪えば、過去現在未来のすべてに罪を犯すことになるだろう。

ヴォータン

わめいても、お前に指輪の権利はない。

ヴォータンはアルベリヒを捕まえて、指輪を奪い取る。アルベリヒの叫び声。

ヴォータン

(指輪をはめる)権威ある私をより高めてくれるものを得た。

ローゲ

さあ、行け。

アルベリヒ

これで自由か?指輪に呪いあれ。持ち主は不安にさいなみ、持たない者は指輪を求めよ。俺の手に戻るまで、指輪の主人は指輪の奴隷になれ。俺の呪いを逃れることはできない。

「アルベリヒの呪い・これで自由か?」Bin ich nun frei?

アルベリヒは立ち去る。

ローゲ

聞きましたか?

ヴォータン

(指輪を見ながら)放っておけ。

山の上が次第に明るくなり、神々が現れる。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
良い知らせはあるの?

ローゲ

(宝の山を差し)フライアの身代金はあります。

フロー(豊穣の神)
さわやかな風が再び吹き、我らを満たす。永遠の若さを与える女神と永遠に別れることになれば、私たちは悲しい結末を迎えただろう。

「さわやかな風が吹いて」Wie liebliche Luft wieder uns weht

巨人のファーゾルトとファーフナーが、女神フライアを連れてやってくる。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
愛しい妹よ、戻ってきたのね。

ファーゾルト(巨人、兄)
(フリッカを遮り)まだ触るな。俺たちのものだ。人質を大切に世話した。代金を支払うがいい。

ヴォータン

代金は準備した。

ファーゾルト(巨人、兄)
手放すのは惜しい。俺の心から彼女を消すために財宝を積み上げろ。

ヴォータン

フライアに合わせて物差しを用意しろ。

フライアは中央に立ち、巨人たちは自分たちの杭を彼女の身長と幅に合わせて地面に立てる。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
人質と同じだけの杭を打ったぞ。宝を入れろ。

ヴォータン

作業を急げ。早く終わらせろ。

ローゲ

手伝え、フロー。

フロー(豊穣の神)
フライアの辱めを早く終わらせよう。

ローゲとフローは、フライアの前に宝を積み上げていく。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
隙間なく積み上げろ。

ドンナー(雷の神)
恥知らずの悪者に、怒りがわく。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
雷を鳴らしてもここでは無駄だ。

ヴォータン

争いはやめろ。フライアは隠された。

ローゲ

宝はなくなった。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
髪が光っている。その網細工を渡せ。

ローゲ

この頭巾もか?

ヴォータン

渡せ。

ファーゾルト(巨人、兄)
フライアは見納めか。(宝に近寄り)彼女の目が見える。瞳が見える限り彼女は渡さない。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
隙間にふたをしろ。

ローゲ

どこまで欲が深いのか。こちらの宝はないぞ。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
ヴォータンの指輪がある。それを渡せ。

ローゲ

(巨人たちに)お前たちに教えておく。この黄金はラインの乙女たちのものだ。ヴォータンは彼女たちに指輪を返すのだ。

ヴォータン

何を言うのか。苦労して手に入れたのだから、私のものだ。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
代金として差し出せ。

ヴォータン

お前たちが欲しいものを言え。世界にある何でも叶えてあげよう。だが、指輪は渡さない。

神々はヴォータンに指輪を渡すように説得する。あたりが暗くなり、知恵の女神エルダが出てくる。

エルダ(知恵の女神)

エルダ(知恵の女神)
手を引きなさい、ヴォータン。指輪の呪いから逃れるのです。

「手を引きなさい、ヴォータン」Weiche, Wotan! Weiche!

ヴォータン

お前は誰だ?

エルダ(知恵の女神)

エルダ(知恵の女神)
私は過去と未来を見通すことができます。太古の知恵の女神エルダがあなたを諫めているのです。

ヴォータン

ここに残ってくれ。お前の声は心地よい。

エルダ(知恵の女神)

エルダ(知恵の女神)
警告しました。よくお考えを。

エルダは消え、ヴォータンもそれを追いかけようとする。他の神々が引き留める。ヴォータンは呆然としている。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
何がしたいの?正気に戻って。

ドンナー(雷の神)
(巨人たちに)少し待ってくれ。指輪は渡す。

神々は、ヴォータンの様子を見守る。

ヴォータン

(決意したように)フライア、ここにおいで。巨人たちよ、指輪は渡そう。

指輪を宝の山に放り、巨人たちはフライアを離す。ファーフナー(巨人、弟)はすぐに宝を袋に詰め始める。

ファーゾルト(巨人、兄)
待て、欲深いやつめ。平等に分けろ。

「待て、欲深いやつめ」Halt, du Gieriger!

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
宝より女神を欲しがったくせに!お前を説得するのは大変だった。宝を分けても、多くもらう。

ファーゾルト(巨人、兄)
お前たち、誰か仲裁役になってくれ。

ヴォータンは目をそらす。

ローゲ

宝なんてくれてやれ。お前は指輪を狙うのだ。

ファーゾルト(巨人、兄)
(ファーフナーを蹴飛ばし)どけ!指輪は俺のものだ。フライアの瞳の代わりに、俺が手に入れたものだ。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
指輪は俺のものだ。

ファーゾルト(巨人、兄)が、ファーフナー(巨人、弟)から指輪を奪い取る。

ファーフナー(巨人、弟)

ファーフナー(巨人、弟)
(兄に杭を振り上げて)指輪を持っていろ。(瀕死の兄から指輪を取り)フライアの瞳にまばたきしていろ、もう指輪を触ることはできない。

ファーフナー(巨人、弟)は宝を袋に詰めている。

ヴォータン

…呪いの力は恐ろしい。

ローゲ

ヴォータン、あなたは幸運だ。指輪を得たことで、利益を得て、指輪を失ったことで、さらに利益を得た。

ヴォータン

だが、不安と恐れにさいなまれる。それを終わらせる方法を、エルダに教えてもらいたい。彼女に会わねば。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
ヴォータン、気高い城が城主を迎えようと待っているわ。

ヴァルハル城への神々の入城

ドンナー(雷の神)
湿気が漂っていて、すっきりしない。雲を集めて閃光のある天気にしよう。空を明るく掃除しよう。

おおい、集まれ、霞よ、湿気よ。雷の神が招集するぞ。(ハンマーを振り)集まれ。

「おおい、集まれ」He da! He da! He do!

雲が集まり始め、ハンマーで石を叩くと雷が鳴る。ドンナーは雲の中に姿を消す。

ドンナーの声(雷の神)
フローこっちに来てくれ、橋の道を示してくれ。(フローも雲へ)

晴れて明るくなり、ドンナーとフローが姿を見せる。虹の橋が城に通じている。

フロー(豊穣の神)
この橋は城へと通じています。あの橋を渡っていきましょう。

「この橋は城へと通じています」Zur Burg führt die Brücke

ヴォータン

夕暮れに太陽が輝いている。気高い光の中で城は主を待っている。朝から夕暮れまで城の獲得は大変だった。闇が忍び寄ろうとも、城は隠れ家となるだろう。

私は城に挨拶する。さあ、妻よ、ヴァルハラに住むのだ。

「夕暮れに太陽が輝き」Abendlich strahlt der Sonne Auge

ヴァルハラ(Walhall)…「戦士の広間」の意味。

フリッカ(ヴォータンの妻・結婚の女神)
その名前は聞いたことがないですよ?

ヴォータン

恐れの中から私の勇気が、考え出した言葉だ。

ヴォータンとフリッカは手を取り合い、フロー、フライア、ドンナーと続いて城に進んでいく。ローゲは少し離れて、その姿を見る。

ローゲ

やつらは没落に向かっている。彼らと関わるのは恥ずかしくてたまらない。たとえ神聖な神々だとしても、彼らと一緒に滅びるのは愚かだ。よく考えないといけない。私が何をしようと、誰にもわからないだろう。

「やつらは没落に向かっている」Ihrem Ende eilen sie zu

ローゲは神々の後をゆっくりついていく。

ラインの乙女たちの声
ラインの黄金、清らかな黄金。澄んだ黄金を失って嘆いている。黄金を返して。

「ラインの黄金」Rheingold! Rheingold! Reines Gold!

ヴォータン

(足を止めて)あの嘆きはなんだ?

ローゲ

ラインの乙女たちが黄金を奪われたことを嘆いています。

ヴォータン

忌々しい水の精。やめさせろ。

ローゲ

おい、水の中の乙女たち。ヴォータンからの要望だ。お前たちの黄金が輝くことはないが、神々の栄光の中で泳ぐといい。

神々は笑い、橋を登っていく。

ラインの乙女たちの声
ラインの黄金、清らかな黄金。親しみと忠実さがあるのは水底だけ。地上で偽りと卑劣が栄えている。

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